後発アマゾンビジネスは日本市場に浸透するのか?=理央周

後発アマゾンビジネスは日本市場に浸透するのか?

【アマゾンビジネスが日本でもスタート】

9月にオープンした、アマゾンの法人向けサービス、アマゾンビジネス。企業や個人事業主にむけてのサービスになる。

米国では、2015年からサービスを開始しているが、このたび日本でもスタートさせた。

最大の特徴は、2億点を超える商品ラインアップ。法人向けの ECといえば、まず思い浮かぶのが、アスクルや大塚商会だろう。日本市場においては、この2社が、抜群の知名度と、信頼感で、先行者利益を有していると言える。

しかし、アスクルを例にとると、商品点数は約373万点である。(2017年8月現在、アスクルホームページより)単純に比較をしてみると、扱い点数では、アマゾンの品揃えは圧倒的である、ということが言える。

2億点の商品ラインアップを可能にしたのは、マーケットプレイスに出店している内外の事業者とのこと。自社のみでの供給ではないところが、巨大プラットフォームを有するアマゾンの独自価値の一つだ。

【アマゾンビジネスの独自性】

では、アマゾンビジネスのサービスの独自性は、2億点の品数だけだろうか?

まず、アマゾンビジネスを競合他社と比較した場合の大きな特徴は、通常の消費者向けのアマゾンサイト同様、小口配送や、お急ぎ便・お届け日時指定便などの、Amazonプライムの配送特典を、期間限定ではあるものの、注文金額にかかわらず、無料で使えることにある。

これまでアマゾンが培ってきた、対消費者向けの小売ノウハウを活用した、対法人サービスが生まれるのだ。

次にあげられるのは「利便性の高さ」であろう。アマゾンビジネスの想定顧客は、企業の購買担当者や個人事業主まで幅広い。彼らにとって、「文房具はA社で買うけれど、テーブルや椅子などの大型家具はB社で買わなければならない」という、時間や労力を犠牲にする「手間」は、相対的な顧客価値を下げてしまう。

その点、マーケットプレイスに出店している自社以外の業者の、販売するカテゴリーが多岐にわたるため、アマゾンでは、競合と比べても、ワンステップで買うことができる、という利便性が上がるのだ。

顧客価値を上げるには、顧客に利益を提供するだけではなく、顧客が犠牲にすることを低減していくことが重要なのだ。

私も登録をやってみたが、ほんの数分で完了。セラーセントラル、という管理画面にたどり着き、とてもシンプルでわかりやすい「かんたん出品ナビ」が表示される。

出品していく上でのノウハウや手法などは、アマゾンが開催するWebセミナーで受講することができるため、初心者でも簡単に始めることができそうだ。

【アマゾン最大の強みは顧客中心主義の組織としてのDNA】

また、支払い方式のオプションとして、日本独自の仕組みである、「請求書払い」も行うとのこと。

「アマゾンビジネスは、いろいろなお客様がご利用されると思っています。大手企業だけでなく個人事業主も対象にしていますので、クレジットカード払い、請求書払い、コンビニ払いなど、あらゆる支払い方法に対応したいと思っています」(アマゾンジャパン ディレクター星健一氏~CNetJapanのインタビューより)

私が在籍していた2001年当時も、日本の商慣習に合わせ、クレジットカード払いのみだった支払方法に、プロジェクトチームを編成して、代金引換の仕組みを導入したことを覚えている。

Amazon.com バイスプレジデンドのスティーブ・フレイザー氏は、CNetJapanのインタビューで、「コンシューマー向けのイメージが強いアマゾンですが、法人事業はどのように位置付けているのでしょう」との質問に、「最も重要なことは、アマゾンが常に顧客の声に耳を傾けているということです。我々はお客様のニーズをベースに事業を展開しています。これはビジネスでもコンシューマーでも変わりません」と答えている。

私が在籍していた15年以上前から、顧客のニーズに対応し、その期待のさらに上を行くにはどうすればいいのか、と常に考えている、アマゾンの顧客中心主義のDNAは、法人向けビジネスにおいても、当然のことのように語られている。

どこまでいっても、アマゾンだけの強みは、「顧客中心主義」でビジネスを開発していること。

日本において、アスクルや大塚商会と比較した時に、後発とはいえ、これからが楽しみなアマゾンビジネスだ。

■目次

… 1. 特集 「後発アマゾンビジネスは日本市場に浸透するのか?」

… 2. コラム 「名古屋メシはおしゃれか?」

… 3. 今週のビジネス書「Harvard Business Review

~顧客は何にお金を払うのか?」

… 4.  時間術「自分にとって重要な現場とは?」

… 5.  著作・イベントのお知らせ

… 6. 編集後記

2.コラム: 名古屋メシはおしゃれなのか?

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