デジタルによる破壊にどう対処するか? ~ファッション業界編=理央周

いつも、このメルマガを読んでくれて、ありがとうございます。

3月に、新しく一般社団法人として、最適経営学践協会 を立ち上げました。

情熱ある経営者と右腕社員・幹部社員が、学び、実践する中で知恵を出しあう、「経営の羅針盤」という場を提供し、お互いに高め合うことで、各社の収益好転を目指すことを、目的として設立しました。ホームページもやっと完成しました。こちらです→ https://www.saiteki-keiei.org/ 

マーケティングを担当する私に加えて、経営理念、人材育成、組織、会計、法務のプロが教鞭をとる、経営に必要な要素をカバーする学びの協会です。

全国にも展開していくので、ご期待くださいね。

今号は、「ファッション業界で生き残るのは誰だ」というテーマです。

それでは今号も、最後まで読んでくださいね。

特集【デジタルによる破壊にどう対処するか?〜ファッション業界編】

グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの、GAFAと呼ばれる4大プラットフォーマーを中心に、IT企業、デジタル関連のニュースを聞かない日はない。

特に、インターネット販売を中心とする、Eコマースの浸透のスピードが速く、リアル店舗を中心とする既存企業の事業を破壊する、デジタル・ディラプションの影響は大きい。

2017年の米国の小売店の閉鎖は約7000件。この数字はリーマン・ショックが起きた、2008年を超えるとのこと。(日経 xTECH/日経コンピュータ より)

この中には、老舗の百貨店、シアーズやメイシーズにJCペニー、アパレルのアバクロンビー&フィッチや、家電量販店のレディオシャックも含まれる。

もちろん、この波は日本にも来ていて、このメルマガでも書いて来たように小売り各社は、それぞれの工夫を凝らし、事業を再展開していこうとしている。



アパレル業界を侵略するEコマースの巨人たち

洋服や靴などのアパレルのグッズは、ほんのちょっと前まで、試着をしてから買う、という購買習慣のため、インターネットで買うものではない、と多くの消費者は思っていたはずだ。従い、Eコマースでは売りにくい、という固定観念もあった。

ところが、ITの進化と、ネット通販の一般化による浸透で、消費者の間でも、サイズが合わなければ返品交換できる、一度買えばあとは心配ない、といった具合に、ネットでも買える、ということが広まってきている。

この流れに、スタートトゥデイのゾゾタウンでは、自分のサイズを測り、無駄ない購買に結びつけるための、センサースーツを開発し、(当初はうまくいかなかったようだが、再度挑戦しようとしている姿勢も素晴らしい)より顧客ニーズに近いもの、顧客満足を超えられるサービスを提供できる努力をしている。

アパレルのネット販売に関しては、このゾゾタウンの一人勝ち的な雰囲気のある中、アマゾンも、ファッションカテゴリーを強化している。

「アマゾンファッション」で販売する商品を撮影するスタジオを改装し、商品の点数やその画像数を倍増させると発表している。

商品点数のみではなく、スタイリストと契約し、これまでの欧米のコーデ中心だったスタイリング提案を日本市場に合わせる工夫を入れ込むなど、攻勢に出ている。

アパレル各社はどんな戦略をとっているのか?

このようなインターネット通販企業の、アパレル業界での攻勢が目立つうえに、メルカリのようなCtoC(個人間取引)も浸透している中で、リアル店舗を持つアパレル企業が、どう立ち向かっていくのか?

ここ最近、アパレル関連の企業の工夫が目立つので、各社がどのような戦略とっているのか、マーケティングの視点で見た場合、私たちが見習うことができる点は何かを、考えていきたい。

2018年2月期の連結売上で、9年ぶりに減収となった、カジュアル衣料品大手のしまむらの、70〜80歳代のシルバー世代向けの商品展開の、路線を変更した件について。

4月30日の日経MJによると、若々しい色合いを使った、シンプルなデザインの商品を投入。それまでの、派手な柄や装飾をあしらった、色的には、赤やピンクを中心とした商品群から、「最近のおばあちゃんは若々しくなっている」との判断で、シンプルなデザインの、カジュアル衣料品の商品群を投入したとのこと。

この背景には、シルバー世代の市場の拡大や、自社での販売比率の増加、そしてライバルのユニクロの好調などを鑑みての、新商品ラインナップの方向転換とのこと。

自社の定番商品を、大胆に変更することは、大手企業では難しい。必要だ、と感じても、過去の成功体験が邪魔をしたり、組織として、認められるまでに時間がかかったりするうちに、ライバルに先を越されてしまうことが多いからだ。

紳士服大手の、「洋服の青山」も、AIを活用して、顧客への商品提案に活用しようと試みている。

日経MJによると、来店した顧客の視線をセンサーで検知し、視線の動きからAIが顧客の興味や関心を、推定して商品提案や接客に生かす実証実験を、福山本店と東池袋店で4月より始めたとのこと。

この実験では、顧客の視線を検知するセンサーを、マネキンコーナーに設置し、来店客の視線の動きから顧客の興味を元にAIが分析、店員のモバイル端末にその情報を通知、接客する、という流れだ。

ベテラン社員のノウハウを共有できる仕組みになっているので、若手社員のスキル向上にもなるという。若い層をターゲットにしている、ザ・スーツカンパニーにも展開する案もあるらしく、これからが楽しみな施策だ。

この方法であれば、顧客接点での店員と顧客との会話という、リアル店舗でなければできない体験価値を提供できる。

留意すべき点があるとすれば、AIに依存しすぎる可能性があること。いきすぎたIT化は、人間味をなくし、だれにでもできてしまう、味気ないものになる。人間らしさ、人間でなければできない曖昧さなどを、どう残せるのか、がこの企画のポイントだろう。

実際に、@コスメを展開するアイスタイルは、2019年から店頭で測定した肌情報を活用する、顧客分析を始める。

日経MJ 5月6日の記事によると、これまでも肌情報の分析をしてきたが、顧客ごとの購入履歴とその肌情報をひも付けて、おすすめ商品を割り出す、というものだ。

アマゾンの協調フィルタリングは、基本的には購買履歴から、おすすめ商品を割り出すが、このアイスタイルはそこに、顧客それぞれの肌情報を付加するというものになる。

化粧品にしても、アマゾンの商品にしても、アパレルと違う点は、購買頻度が高い点。そのぶん、リピート購入が高いので、顧客ごとの、購買履歴の総数も多くなる。

前述の、青山商事の試みは、リアル店舗での、顧客行動に特化しているが、毎週のように服を買いに来るわけではないため、各個人の購買履歴を基にしてのおすすめ、というよりも、多くの似た層の顧客たちの、行動と購買履歴からの推測になるのであろう。

従い、これらの情報と、購買履歴とひもづければ、さらに顧客が欲しいと感じるものに近づける可能性がある。

京都のヒューマンフォーラムが展開する、「SPINNS」の本店の試みは、ピンク、とか、ロック、西海岸、トイ、など、テーマ別の試着室を用意している。

インスタ映えを狙っての改装だとのことだが、ネットで見てリアルに誘導させる、というO to O(オンライントゥオフライン)的な発想の施策だ。

顧客が楽しいと感じる体験を SNSで拡散してもらい、それを見た人たちを来店誘導につなげる、という仕組みを考えていると思われる。

ものでの差別化が難しい今、リアル店舗での顧客体験価値を提供する試みとして、ユニークな手法だと言えそうだ。

アパレル各社の工夫に何を学ぶか?

リアル店舗を持つアパレル各社の施策に、私たちは何を学ぶべきか?

しまむらの事例からは、ターゲットの明確化、とりわけ、心理や価値観による切り分けが重要だという点。シルバー層に商機がある、との判断だけではまだ不十分で、シルバー層が求めているものは何か、変化している価値観を捉えることでの商品開発が、必要な時代だと認識することが重要だ。

また、各社の顧客行動を重視する点にも、見習う点が多い。青山商事のような大企業でなければ、大規模な設備投資は難しいが、AIにやれることを、シンプルにすればできるはずだ。

顧客の行動に注意を払い、常に欲しいものは何か?というセンサーを、社員各個が持てるようになれば、システムは不要だし、何より人間としての温かみが残る。

商品を大量に仕入れて安く売る、という手法は過去のもので、ニーズが多様化している今、目利きによる顧客各位へのオススメがない店に、人は行きたくはない。そこを、企業としてできるようにしていくことで、社員各員の意識も上がり、リアル店舗ならではの良さを、顧客に伝えることができる。

とはいうものの、インターネットを便利に活用することを、放棄する手はない。

「SPINNS」のOtoOの施策のように、SNSやブログなどをうまく使い、リアル店舗に誘導すること、さらに一歩進めて、顧客がリアル店舗でも、オンラインでも買うことができる、オムニチャネル化を目指すのも一手だ。

オムニチャネル化を考える際のポイントは、どこででも売る、という意味でなく、顧客が、場所や時間に制限されず、便利に買うことができる状態を作る、と捉えるべきだ。

アパレルで言えば、ジャケットなど買う際に、選び抜いて買いたいようなものはリアルで、下着や靴下などリピート性の高いものなどをインターネット販売で、などというふうに工夫していくことで、顧客が買えるチャンスを増やしていくのがポイントなのだ。

IT活用はなにも、大企業だけができることではない。特に、人間による顧客体験価値の提供は、リアル店舗を持っている事業者にしかできないことだ。

真のリアルとITの融合に、必要な条件は、実は「リアル」なのだ。

2.コラム イエスマンと同じくらいダメなノー・マン

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