ビジネスモデルとしてのシェアリング経済とその自分化=理央周

特集【ビジネスモデルとしてのカーシェア】

このメルマガでもこれまで多く取り上げてきた、シェアリングビジネスの拡大が最近顕著だ。今号では、シェアリングビジネスを、一種の「エコノミー」として捉え、ビジネスモデルとして、活用できるか、という視点で考えて行く。

自社のビジネスに取り入れることができるか、という視点で読み進めてもらえればと思う。

カーシェアリング最大手パーク24

先日の日経新聞にも、カーシェアリング国内最大手の、パーク24の会員が1,000,000人を突破した、という記事があった。

シェアリングビジネスに関しては、2号前でも書いたばかりではあるが、こういった量的な増加だけではなく、ビックデータ分析に使えるという、「質的」な情報の増加も著しい。

記事で紹介されていたのは、シェアリングに使われる車で収集できるデータの内容である。たとえばエンジンやバッテリーの稼働状況や、ドアや鍵の開閉状態、走行距離、利用時間、ガソリンの使用量など、ユーザーの行動分析ができる点に注目したい。

さらに興味深いのは、このパーキング24のカーシェアリングを利用した後に、ユーザーのスマホに、利用時間や走行距離等、利用状況の細かい情報が記されたメールが届くという点である。

パーク24は給油をすれば、一定時間も無料で使用でき、急発進や、急ブレーキが少ない安全運転をすると、ポイントが貯まるなど、IoTを活用した様々でなデータをもとに、きめ細かくユーザーのためになる様アマナことに対応できる、「使いやすい仕組み」を作り上げた。

つまり、ユーザーが使えば使うほど、ユーザーにも便利になるような「知恵」が蓄積される、という、まさに今最も重要だと言われている、ユーザーも企業もハッピーになれる、エコシステム的なビジネスモデルだと言える。

カーシェアリングとして、車を使った分に応じた売り上げを、顧客から徴収する、というビジネスモデルだけではなく、これらのデータを活用して、さらに会員サービスを充実させることによって、より上級のサービスを開発・展開することができるであろう。

そのためには、このデータを明確に分析し、気づきを得て、それを活用するスピード感が必要とされる。

しかし、そこを乗り越える尽力があるからこと、競合企業との戦いに現段階で優位に立っているといえそうである。

シェアリングビジネスの水平拡大

このシェアリングビジネスは、カーシェアだけでなく、他業界でも浸透しつつある。

まず、住宅宿泊事業法(民泊新法)でシェア経済に関心が高まってきた。

そんな中で、シェアビジネスにおいては、カーシェアのみでなく、アパレル、民泊をはじめとする宿、IKEAの家具のシェア、自転車など、まさに百花繚乱。様々な業界でビジネスとして成立し始めている。

アパレル以外の業界にもシェアリングのビジネスは広がっている。少し前の話になるが、メルカリも自転車のシェアサービスを始めている。メルカリは、専用アプリを用意し、利用者は駐輪場で、サドル下のQRコードを読めば、自転車の鍵を解除して使える仕組みである。料金は1分4円と非常にリーズナブルで使い易い価格設定になっている。

自転車シェアにおいては、各地でかなり浸透していると言っても良い。先日行ったニューヨークでも、シティーバンクがやっているのであろう、自転車のシェアリングサービスが、セントラルパークの近くにあった。自転車そのものに、シティバンクのロゴが掲載されているので、自社のブランド浸透にも一役買っている、という感じだった。

大阪にも「大阪バイクシェア」という自転車シェアのサービスがあり、好きな場所で入れ替えできる、というキャッチコピー。

HUBCHARIポートという自転車が置いてあるサイクルポート、駅の近くやホテルの前にある。便利な場所で借りて乗れるのがユーザーにとっての価値でもある。課金に関しては、クレジットカードも使えるし、セブンイレブンのマルチコピー機で1日パスを購入することもできる。

シェアリングビジネスにおける顧客への付加価値は、何よりも利便性の高さ。大阪バイクシェアのビジネスモデルには、どこででも乗れるし、乗り捨てられる、利便性が拡大の鍵になるであろう。

こういった流れは、結婚式場ビジネスにも広がっている。

エスクリは、渋谷の式場を開いている時間帯に、シェアオフィスとして提供するとのこと。休眠している経営資源を、このように活用するということに於いても、シェアリングビジネスは格好のビジネスモデルということができる。

テイクアンドギブ・ニーズでは、国際短編映画祭を手がける企業と組んで短編映画を上映するし、ノバレーゼでは、6月末までビアガーデンをするとのことだ。(以上日経MJの記事を参考に筆者まとめ)

結婚式を上げるカップルが減少傾向にあるこの業界では、自前の施設を活用し、売上を上げるという視点のみでなく、これらのイベントに集客してきた人々を、どのようにして、以降も自社のファンとして、次回購入に繋げられるのか、継続的につなぎとめることができるのか、また、ファンとして口コミをはじめとする、アンバサダーになってくれるのか、というファン化に向けた戦略も必要になるだろう。

遊休施設・設備を生かす、ということに関しては、中小企業の印刷会社の設備を活用する印刷仲介、という仕組みを作ったラクスルが面白い。

これもエコシステム的な発想で考えてみると、空いている印刷機械を使い売上をあげたい印刷会社と、仲介をするラクスル、仕事を発注する事業会社の、三方がハッピーになる仕組みだと言える。

また、これまで大半が消費者間どうしのいわばCtoCだった、シェアリングビジネスに、BtoBの要素を取り入れた、という意味でラクスルの功績は大きい。目のつけどころが、画期的だったと言える。

ラクスル以外にも企業の休眠施設を活用するビジネスは増えていて、オフィスや商業施設をシェアするアキッパやスペイシー、通信施設を商業施設内でシェアするJTOWERなど、数多くがしのぎを削っている。(日経新聞6月18日の記事を参考に筆者まとめ)

シェアリングビジネスの進化系?サブスクリプション

アパレル業界においても、所有よりもシェア、というビジネスが、カテゴリーをまたいで多角化している。

紳士服大手のAOKIが4月に始めたのが、ビジネスウェアのレンタルサービスで、月額7,800円の利用料を支払うことで、スーツとシャツ、ネクタイのセットレンタルできる。このセットを毎月交換でき、返却時にはクリーニング不要で、箱に入れて送り返すだけで良いというサービスだ。

ビジネスマンにとって、買うお金だけでなく、選ぶ手間や、買いに行く時間をセーブすることができることも、シェアリングが提供できる価値と言える。

以前に、このメルマガでも取り上げたエアークローゼット同様、アパレルのレンタルビジネスと同じ「仕組み」になっている。購入せずに利用料を支払うという意味では同じだが、毎月に課金により、新しいものを届けてもらえる、といういわゆる継続従量課金制度、すなわちサブスクリプション型である。

サブスクリプションは、IT業界では以前より一般的だったモデルで、例えば、Adobeでは高額なソフトウェアの販売をやめ、使用料として毎月課金するようにしたビジネスモデルと、基本的には同じである。

AOKIやエアクローゼットのビジネスを筆頭に、アパレル業界でのサブスクリプション型のサービスが増えている。レナウンや三越伊勢丹もそれぞれの特徴を生かして、継続課金型のビジネスを始めている。

この背景には、消費者が「所有よりも借りることで十分」という心理的な要素が、浸透してきたことが背景にある。

シェアリングビジネスをどう捉えるべきか?

この百花繚乱のビジネスモデルとしての、シェアリングビジネスを、我々はどう捉え、自社のビジネスの参考にすべきだろうか?

まず、市場の変化に敏感に対応するために、情報感度を高めるべきであろう。

若い世代を中心に、所有からシェアに、モノに関しての意識がシフトしている。そして、モノからサービスへとシェアの考えも移行している。

自社の事業領域において、想定顧客層の考え方と価値観に対して、常にアンテナを張っておくべきだろう。

次に必要なことは、とはいうものの、事業としてシェアリングビジネスを取り入れる際に、必要な経営資源も多くかかってくることも念頭におくべきだろう。ITにより可能なことも多くなってはいるが、一般的なインフラとしてシェアリングに活用できる資源がない場合、その準備には時間を要するし、企業としても体力がいることを忘れてはいけないだろう。

共有する、所有ではなく一時保管、買うのではなく、借りる、という消費者志向のさらに向こう側には、便利であること、手間がからないなど、付加価値が必要になる。

アパレルのシェアリングを例にとれば、買うよりも借りる方が安い、という利点だけではなく、買いに行かなくてもいい、さらにプロスタイリストのコーデも教えてもらえる、といった顧客価値、すなわちベネフィットを提供することが、これからはさらに必要になる。

その際に必要なことは、まさしく顧客価値を見直すことだ。何時も、教えてくれるのは顧客。しかし、顧客が顕在的に困っていたり、欲しいと思っていることではなく、潜在的な需要をいかに見つけることができるのか、が勝負の分かれ目になる。

この続きを見るには

(6,129文字)

¥240(税込)

購入して続きを読む