[ビジネス発想源 Select] 第2125回:担当者レベル

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【第2125回】 担当者レベル (2010年8月31日配信)

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企画の仕事をしていて、特に無駄な時間を浪費させられてしまうのが、「担当者レベル」という状態です。

企画職の方ならきっと、大きく共感していることでしょう。

「担当者レベル」とは何かというと、何の決定権も決裁権も持たない担当者の中でしか話が進んでいない、という状態のことです。



例えば、A社という大手企業から話が持ちかけられてきたため、時間をかけて企画案を作り提案をする。

すると、A社から持ちかけられてきたと思ったその話は、話を持ってきたA社の担当者の一存で進めていたことで、別にA社の中ではそんな話は通っていなかった。つまり「担当者レベル」だったということです。

こちらはかなりの時間を割いて企画案を作成したというのに、「まだこれは担当者レベルでの話で、担当者レベルではOKですがこれから上層部に掛け合ってからということで」などと言って、実は話が全然進んでいない。

しかも、その担当者がさっさとA社を辞めて独立し、その企画案を持ち逃げして同業のB社に持ち込んだ、なんていうケースもよくあります。



「担当者レベル」という現象は、「自分はいかにも仕事ができるんだぞ」と有能ぶりを見せたがるサラリーマンが相手の場合によく起きます。

「自分がOKということは、上もOKのようなものだから」という雰囲気をかもし出して、仕事を引き出しておきながら、土壇場で逃げたり下りたりします。

大手企業の担当者から話を持ち込まれた時に、零細企業は「あの大手企業から話が来た!」と舞い上がってしまい、それが本当にその大手企業から来た話なのか、それとも大手企業の担当者レベルの話なのかを確認しないまま、全力で話を進めてしまうケースがよくあります。

それが、大した権限もない勘違い人間の「担当者レベル」の話だった場合、本当に大きな時間をロスしてしまいます。

その担当者としては、「担当者レベルの話だから、なかったことに」ということは別にプラスマイナスゼロじゃないか、と簡単に考えるのですが、その相手としてはかなりの時間や労力をロスしているのです。



もっと大きな規模の「担当者レベル」の話もあって、例えば支店で動いていたが本店では承認されていなかったとか、日本支社で動いていたが本国のあずかり知らぬ話だったとかいうことも、企画の現場ではよくある話です。

企画が随分と進んだ時になって、「本社の決済が下りなくて、ダメでした」「本国からの正式な認可が下りなかったので、NGです」などと後出しで言い出すのですが、本社の決済や本国の認可が下りないのではなく、「もともとその話は担当者レベルだった」というのが実際のところでしょう。

担当者レベルの話でなければ、最初から「本社の決済が出なければNGですから」とか、「万一のために、本社にこういう根回します」とか、前もって本社や本国との絡みの話はしているはずだからです。

その結果、その担当者は下りるだけで済みますが、関わった人たちはみんな、膨大な損失を生んでいるのです。



ですから、企画の話を進める場合には、自分たちがどれだけ零細で相手がどれだけ大手であっても、その企画の話が現在、会社として進んでいるものなのか、それとも単なる「担当者レベル」で進んでいるものなのかは、絶対に最初からきちんと確認をしておかなければなりません。

その担当者に決定権も決裁権もないのに、付き合っている時間があまりにももったいないからです。

そして、「担当者レベル」の話であることが分かったら、その人にどれだけの決定権や決裁権があるのかはきちんと聞いておく必要があります。

「担当者レベル」の人に頑張って提案をしても、だいたいその担当者が大して有能ではないから、「提案してもらった内容を上層部に提案したがダメだった」という結果になることが多いのです。



もちろん、本当にその担当者があまりにも有能で、その担当者にかかれば「担当者レベル」の話が間違いなく全社的に決定する、ということもあります。

たとえそうであっても、「担当者レベル」か正式かどうかは、必ず確認して把握しておきましょう。

自分たちの時間の浪費を防ぐことができますし、またその担当者が後々痛い目を見て面子を失うということを防いであげることもできるからです。

そんな「担当者レベル」の話には、ぜひ注意をしてもらいたいと思います。

また、自社の担当者たちが「担当者レベル」の話をして関わった人たちに大きく迷惑をかけてしまった、なんていうことのないように、担当者たちの権限などもきちんと把握しておくようにしましょう。



【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)-----------------

・自社が取引先の「担当者レベル」の話で損失を被らないように工夫しなければならないことは何か。ノートにまとめる。

・自社の担当者が取引先に「担当者レベル」の話を持ちかけて迷惑をかけてしまうようなことがならないように、工夫しなければならないことは何か。ノートにまとめる。



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