消えた駅弁5「天晴れ!! 富士山弁当/新富士駅」

 東海道新幹線で西へ向かうときは、必ず進行方向右側の席を指定する。もちろん富士山を眺めるためだ。いつ、何度見ても飽きない日本一の山。通っていた小学校の屋上からも遠望でき、子供の頃から身近な山だったので、富士山をテレビでしか知らない人が全国に大勢いると知ってちょっと驚いたものだった。

「天晴れ!! 富士山弁当」は、富士山のお膝元、富士市の調製元が出していた駅弁で、見たとおり富士山がモチーフ。ご飯が富士山に見えるように仕切った容器がおもしろい。

富士山の頂上部分に桜えびを配置したのは、葛飾北斎の「富嶽三十六景 凱風快晴(がいふうかいせい)」、いわゆる“赤富士”をイメージしたから。ゆかりと青海苔は雲である。

 おかずは朝霧牧場の放牧豚の西京焼き、由比の桜えび、富士宮の手作りこんにゃく、蒲原の黒はんぺんなどなど、駿河周辺の名物をぎっしり詰め込んであった。黒はんぺんのフライは個人的な大好物。魚のすり身はほのかに甘く、学校帰りに食べた屋台の味のような懐かしさを味わえた。

掛け紙は、古い映画看板を思わせるレトロ調のイラストを印刷したもの。

心の中で「あっぱれ!」と叫びたくなる一品だった。

 しかし数年前から予約だけの販売になり、いつの間にか売店で見なくなった。

復刻はないかと富陽軒に電話してみたが「う~~ん。このままなくなるかもしれません」とひとこと。あーーー残念。

1100円(当時)/富陽軒