
ミスドの調理廃止店舗設定に学ぶ中小企業の生きる道
ミスタードーナツを運営するダスキンが、2020年までに、ミスド500店舗で、調理することを廃止したとのことだ。
全店舗の約4割にあたるこの500店舗では、ドーナツを揚げるための専用の設備を廃止し、テイクアウト専門店への業態変更や、簡単な調理のみをできる店にしたりしと、客席を増やす方向にあるようだ。
【競争の激化】
クリスピークリームドーナツが、数年前に日本に新規参入した時も話題になったが、ドーナツというカテゴリーは、日本でもかなり人気がある。
記憶に新しいのは、ここ数年で一般的になってきた、「コンビニドーナツ」の台頭。
生活者の立場から見れば、どこででも買いやすくなり、反面、売り手の立場から見れば、新規参入してきた「黒船」に、市場でのシェアを奪われている、ということになる。
ミスタードーナツは、高い知名度や歴史、ヒット商品や店舗数の多さなどのブランド力もあり、業界大手のドーナツ専門店として、ここまで来たが、コンビニ大手の相次ぐドーナツ投入で、業界の競争状況が変わったのだ。
【中小企業は、何に備え何を見習うべきか?】
このミスタードーナツの事例から、中小企業は、何を学ぶべきか?
まずは、市場の変化にいつでも対応できるようにしておくことだ。
とはいうものの、容易なことではない。なぜなら、市場の変化は、消費者自体も予測ができないことなので、マーケティング・リサーチなどの調査では出てこないのだ。
発見するための一つの手法としては、ターゲット層の行動を観察することがある。それも、同じ条件で定期的に、同じ場所を見る、定点観測がよい。
もし、あなたが、コカコーラのような、清涼飲料水の実務担当者であれば、毎日の通勤途中にある、コンビニと競合の自動販売機を、注意深く見ていれば、変化があるときに気が付くであろう。
自社のビジネスの周辺環境を定点観測することで、気づきを得られることが多い。
では、どこを定点観測すべきか?分からない場合は、顧客の疑似体験をしてみればよい。
もし、あなたが資生堂のような化粧品会社の、20代後半のOLをターゲットにしている、リップクリームの実務担当者だとしたら、ターゲット層の行動を推測し、ロフトなどの化粧品売り場に行く、という仮説を立て、定点観測すればよい。
生活者が気づかないうちに、市場は変わってしまう。市場が変わる前に、次の一手が打てると、競争優位に立てるのだ。
【ミスドの業態変更から学ぶべきこと】
ミスタードーナツは、このような市場の変化に対し、営業利益を確保するために、100円均一セールを中止し、専門設備の撤去店舗を設けることに踏み切った。
この「やめる」という選択も、攻める戦略の一つである。
売上や利益が落ちてくると、どうしても、追加での新商品を出したり、新しくサービスをリニューアルしたりしたくなるが、その前段階で、全体を見直してみることが肝要だ。
推測するに、ミスタードーナツは、コンビニドーナツに正面切って戦うよりも、違う土俵で勝負した方がよい店舗がある、と判断したのであろう。
市場機会を見つけ、強みを伸ばすことも経営だが、弱みと脅威を発見し、撤退・縮小する勇気を持つことも、同様に重要なのだ。
企業が新たな一手を打つ時の源泉は、利益から捻出する。
売上を上げることと、経費を削ること、で、利益を増やすことができる。
「引いて攻める」という、攻守一体の経営が必要なのだ。
■目次
… 1. 特集 「ミスタードーナツに学ぶ集中と選択」
… 2. コラム 「ひと手間かけるが実は贅沢~万年筆とインク」
… 3. 書評 「外資系コンサルが教える読書を仕事につなげる技術」
… 4. ワンポイント時間術「戦略論、戦術策だけでは不十分」
… 5. 著書・イベントのお知らせ
… 6. 編集後記