山木康世はシンガーソングライターだ。
昨年古希を迎え、ますます元気な一匹狼。アコギ1本を携えて全国のホールへ、ライブハウスへ出かけていく。
元ふきのとう、といえばフォークソングが好きな人なら、ああ知ってる!と思い出すだろう。山木康世は元ふきのとうのリーダーだ。
二人しかいないのでリーダーというのもピンとこないが、確かにふきのとうのリーダーであった。

解散後、山木はシンガーソングライターとしてソロ活動、今年ソロ29年目になる。
北海道が生んだ叙情派フォークとか、季節感あふれるなんとかとか、ふきのとう時代の山木の楽曲はよくこれらに例えられた。
たしかに、代表曲の「風来坊」「白い冬」をはじめ、「冬銀河」「メロディ」などなど、叙情的な詩とメロディーの曲は多い。
しかし、最近の山木の作る歌はファンクしている。いやパンクかもしれない。
たとえば「貧乏神」「閑古鳥」「入れ歯の歌」などの楽曲は、ふきのとう時代にはあり得なかった歌たちだ。
きれいな詩と美しいメロディラインにしびれていた往年のふきのとうファンにはどうもそれが不満、という話をよく聞くが、当の本人はどこ吹く風。
その日、その朝、トイレで、散歩中にひらめいた詩と曲をすぐにボイスレコーダーに吹き込み、それらを紡いで1曲にする。それが貧乏神になるのだからパンクでしょ。
そして最近、山木ならではの、山木にしか作れないような歌「RAOJIN」を生み出した。
RAOJIN、ラオジンと読む。老人である。
山木に言わせると、老酒からヒントを得て作ったらしい。老人はつまり、熟成発酵した人間だ。
未発表曲だが、ラオジンの歌詞を紹介しよう。
RAOJIN(老人)
老人がひとり町を歩いている
老人はいつも道を間違える
老人は時として逆走する
老人は人と要らぬ争いをしない
老人は人の悪口を平気で言う
老人はけちで人におごったりしない
老人は頑固で誤りを認めない
老人は電線のカラスに声をかける
老人 老人 老人
老人は転ぶような早歩きをしない
老人は人に道を譲ったりしない
老人はでたらめな口笛を吹いている
老人は真面目に嘘をついて笑っている
~~続く~~
ライブでこの曲を歌うと、クスクス、あるある、そうそう、などと小声で聞こえてくる。言いたくないけれど、言い得ている。
誰もがいつかはラオジンになる。
全国約4000万人が高齢者というニッポン、老人の歌が老人たちにどう響くか、たいへん興味がある。
昨日公演を行ったライブ会場のオーナーの言葉。
「今聞こえてくる歌はひどい。まったく心を打たないシンガーばかり。メッセージ性ゼロ。ただ電子音使ってビートを叩き、誤魔化し。ダンス振り付けばかり目立ち。あれでは若者の心が荒んできますね」。
全部がそんな歌ばかりとは言わないが、ぜひ一度山木康世の歌を聞いて欲しい。
山木康世HP https://yamaki-club.com/
来週からは北海道ツアーです。