闇営業事件の発端となった、「友達5千人」という人脈幻想

すっかり落ち着いた吉本興業芸人さんによる闇営業とその後のハラスメント事件ですが、ビジネスの視点で大きな問題を提起したと思います。それは「人脈」という幻想、あるいは妖怪です。

・「友達100人できるかな」

という童謡があったかと思いますが、友達100人なんであり得るんでしょうか?というか、それって本当に友達なんでしょうか?単に宴会や会議で名刺交換しただけ(せいぜいビールお酌しただけ)の間柄の「友達」なんて、ほとんど価値ないんじゃないかと思うんですよ、小学生諸君!

もし小学校に入学しても友達が100人できなかった君!

きわめてまとも。全く問題ないです。こんなくだらない歌の呪縛にかかることなく、健全な大人になって下さい。逆に100人以上友達ができたというのであれば、それって本当に友達なのかという哲学的命題として捉え、その答えをぜひ在学中に見出して欲しいと思います。

要は「友達って何?」という素朴な疑問をすっ飛ばして、友達多い=リア充=幸福。

友達少ない(いない)=リア貧=不幸=生きる価値なしと決めつける(ん?最後は決め付けてない??)こと自体が狂ってるとしか思えないのです。

べ、別にわたしが友達少ないから言うんじゃないんだからね!

そうではなく、単なる知人の数なんて、人生は元よりビジネスの世界においても全然関係ないよということをぜひ子供たちには伝えたいと思います。

・学生時代に打ち込んだのは「人脈作り」というスカスカアピール

就活面接の練習でも本番でも、ガクチカ(学生時代に力を入れた活動や経験)質問に対し、「人脈作りです」と答える学生に会います。やるのは主に文系イケイケ学生です。

しかしその内容は、学生サークルでパーティや交流会、勉強会を開催して何百人も動員したという程度のもので、その何百人とはどんな関係なのか、どんな付き合いやどんなコミュニケーションをしているのかと聞いても答えはほぼありません。有名企業の有名社長の名刺をゲットすることに命をかけた学生もいるようですが、だから何?としか思いませんでした。

これは人脈作りに意味が無いとか、アピールするなということではありません。 何のための活動で、その結果をどう活用できたのか/できなかったのかという考え方を聞いているのに答えられないことを批判しています。

面接を「ウソつき大会」程度にしかとらえられない学生は、珍しいネタさえ話せれば良いと思うのでしょうか、三流の人事でもなければネタ勝負で通用するほど会社は甘くないでしょう。ネタの中身より、その扱い方、考え方の魅力が伝えられなければ民説を通過はできません。

・雑談力なんていらない

「友達5千人」なんてこと自体に意味がないのだと思います。またそれをチヤホヤして取り上げたマスコミにも、この闇営業事件の責任の一部はあるのではないでしょうか。

雑談力が大事とか、とにかく話しをすることばかりがコミュニケーションと勘違いされています。私の講義では話す能力だけでなく、聞く能力をそれ以上に重視しています。コミュニケーションの目的が「上手にしゃべること」ではなく、何らかの関係性構築や交渉など、目的達成にあるはずだという前提があるからです。

興味もない話をされて、それに渋々つきあってくれることはあるかも知れませんが、そんなことで築いた関係性に価値などあるとは思えません。価値のない5千人の人脈作りではなく、目的達成につながる一人との関係性ができる方がはるかに現実的だと思います。

私が法人営業の飛び込みをやっていた際、世間話で引っ張り込むようなオープニングトークは一切しませんでした。意味がないからです。そんな本筋と関係ないことで仮に話ができたとして、契約に結びつく可能性はゼロだったでしょう。それよりもいきなりサービス説明をして、そもそも購買への可能性や関心のある人だけに絞った上で、余計な雑談や世間話ではなく、サービスの本質やその価値、成果などド直球 の話題しかしていません。本当に購買決定権のある人は、見ず知らずの他人と雑談するヒマなどなく、ビジネスにつながるかどうかの判断を瞬時に行う人が圧倒的だと思います。

「まずは一杯」的人間関係構築が成果につながるのであれば否定する気はありませんが、私の部下でそのアプローチで成果を出せた者はいませんでした。その手のアプローチ「まで」は得意でも、成果にはほとんどつながっていない先輩はけっこう見かけました。

人脈作りなんて幻想は、実際のビジネスではほとんど意味ないのではないかとあらためて感じた次第です。