チュートリアル徳井さん事件とその対応についてのコメント

チュートリアルの徳井さんが税務署により重大な申告漏れと所得隠しを追及された事件。あちこちからコメントを求められましたが、アベマTVなどで使われた部分以外でのコメントをまとめました。

・スピード謝罪

週刊誌報道などで一気に所得隠し問題が広がったのが共同通信の10/23昼頃の報道。その後一気に各社が後を追ってニュースが広まり、23日深夜には記者会見を行うというかなりのスピードぶりでした。

申告漏れだけであれば、まあよくあることだし、私用で使ったものかどうかの判断などは本件では些末な問題です。より重大なのはそもそも税務申告を3年もしていないという、常識では考えられないような放置をしたことと、その額が億単位に及ぶ大きなものだったことから、税務当局も見逃すことはできなかったのだろうと推察します。

逃げ隠れできるような事態ではないという判断は正しいと思います。また事件の広がりからかなり即座に会見まで開いた対応も、その内容はともかくスピードの持つ説得力は一定の効果があったといえるでしょう。

謝罪ではスピードも評価の一部です。ただこれは単に早ければ良いというものではありません。きちんと会見に来る記者と、その向こうにいる会見を見ている一般視聴者をいかに納得させられるか、あるいは怒りの延焼をこれ以上いかに防げるかがカギです。

・オロオロ会見

俳優顔負けの、お笑い界きってのイケメンである徳井さんは、番組でも主役というよりは「回し」に近いポジションで、その外見だけでなく進行上もスマートな役割を果たしていると思います。その点では頭の回転も良いイメージです。

しかし会見ではそもそも申告をしない時点でそうとう理由は苦しいだろうと思いましたが、きっちり「自分がだらしない」という非を認めました。スマートポジションの人が、自らの愚かさを認めるというのはお詫びとして正しい方向だと思います。また記者のツッコミにもオロオロと答える無様な姿をちゃんと見せたのも良い対応でした。

ただそれでもやった行為が悪すぎました。正確に見れば、重加算税をかけられるほどの所得隠しと見られた姿勢や、無申告はどう取り繕ってもやはり無理すぎます。「うっかり」で説明のつくものではないでしょう。つまり謝罪という点では、決して間違っていないと思いますが、それでも延焼を完全防止はできなかったということだと思います。

・謝罪はダメージコントロールにすぎないもの

テクニックをろうして、謝罪によって上手くまとめられると勘違いする人も多いのですが、実際には完璧な謝罪などありませんし、またどれだけ完璧だとしても謝罪のやりようだけで何とかなることは普通はありません。要はダメージコントロールである謝罪とは、ダメージをゼロにするというような魔法ではなく、マイナス100のダメージをいかに-90にできるか、上手く行けば-50に持っていけるかも、程度のものと考えるべきなのです。

徳井さんのオロオロ会見は、自らの愚かさを見せるという謝罪の重要な役割を果たせていたと思います。しかしこのことは徳井さんの芸能ポジションに影響が及ぶ恐れがあります。スマートな番組回しができる人というイメージが、今後保ちにくくなる恐れがあるのです。

「自分がバカだったから(申告を)忘れた」という言い訳は、さすがに3年も無申告ともなれば、「個人会社の社長やってるのにダメすぎない?」という当然の疑問を抱かせてしまうからです。今後の芸能界、特にバラエティ番組での立ち位置が、少なくとも事件前と全く同じというのは厳しくなるかも知れません。

・お笑い界きってのイケメンという立場

もう一点。明石家さんまさんも言っていますが、男前であることはお笑い芸人としてマイナスだといいます。男性から見て敵愾心を煽ってしまう恐れがあるからです。さんまさんも若い時からかなりのイケメンだったと思いますが、一方で男性ファンを味方にする戦略も考え、デッパと音痴を前面に出したとのことでした。

徳井さんはお笑い界きっての超イケメン。こうした不祥事には一気にそれが傷を大きくします。やはり脱税ともとられかねない悪質な申告漏れは、単にだらしなかったで済まないリスクを抱えている立場なことを、もう少し慎重になるべきだったのではないでしょうか。

という、お笑いポジショニングの視点でも解説を行いました。

それにしても吉本興業のコンプライアンス教育はなかなか成果が出ないようですね。単に弁護士や警官を呼んでコンプライアンスを訴えたところで解決はできません。もっと根本的に、コンプライアンスが何のために守らなければならないものなのか、リスク管理の視点も含めて教習すべきです。

コンプライアンスが必須であることなど教えられなくても誰でも知っています。講習すべきはそこではなく、なぜコンプラ違反をしてしまうのか、その動因やメンタリティ、環境を踏まえた危険理解の促進ができる研修こそ必要なものだといえるでしょう。