業績好調のニトリに学ぶターゲティングと商品の合体マトリックス思考=理央周

業績好調のニトリに学ぶ、ターゲティングと商品マトリックス思考



【ニトリ業績好調の一因は出店戦略】

22日に発表された、2016年3~11月期の連結決算で、ニトリホールディングスの純利益は、前年同期比36%増となる475億円だった。

節約思考や消費者志向の多様化、eコマースの台頭などから、多くの小売業各社が伸び悩む中、素晴らしい数字だと言える。

その内訳を見てみると、郊外型の既存店は、ほぼ横ばいと堅調。しかし、ニトリの新しい戦略業態で「都心」店舗の成長が、収益好転の後押しをしている。

マーケティングの視点で、ニトリの好調さを分析してみると、まず言えることは、市場ニーズのつかみ方にある。



【地域戦略と商品戦略】

ニトリは、従来郊外型の路面店を中心に、店舗数を拡大してきた。現在の400店舗の大半はこういった大規模店舗である。

しかし、地方中心の郊外型店舗も、ニトリとして、また家具販売店として、飽和状態になる。小売業、特に量販店の宿命といえる、規模拡大の「踊り場」だ。

そこで、都市型のショップインショップだ。銀座のプランタン内の店舗、そして、今月オープンした、新宿の高島屋タイムズスクエア店がそれらにあたる。

出店戦略を郊外型に加えて、都心型にシフトしていくと、これまでなかった顧客層、たとえば、おしゃれ雑貨店や、ロフトにハンズといった店舗に行っていた層を取り込める可能性も出てくる。



【ニトリのターゲティング戦略】

ターゲット層も、これまでとは全く違うと言える。

これまでの郊外店は、売り場面性も広く、大型家具を陳列することもできるし、また、顧客層の住宅や部屋も、ある程度の広さがある。購買時も、車で買いに来る層が大半であろう。

一方で、都心店は売り場の面積も限られているし、車ではなく、地下鉄などの公共交通機関で買いに来る。さらに立ち寄る消費者たちは、「ニトリに行こう」ではなく、「買い物のついでにふらっと立ち寄る」というマインドで店に来ることが予想される。

こうなると、店舗になにをおくべきか、という点に関しても、これまでの郊外型店とは違い、絞り込みが必要になるし、幅広く、若干低めの商品単価の商品群も必要になる。

具体的には、ホームセンター的なイメージの郊外型店舗に対し、センスのあふれる「おしゃれ家具・雑貨店」の要素も、付加していくのであろう。

もともと、ニトリの商品ラインアップの特徴は、自社で開発し海外で生産する商品を中心とする「自前主義」にあった。それにより、仕入れコストを抑えることもでき、リーズナブルな価格で提供できていた。

さらに、生産する工程や労働環境なども含めて、品質には大きなこだわりを持っていたとのこと。

ニトリのコンセプトであり、スローガンでもある、「お、ねだん以上」は、「価格を下げなくても、品質や機能を向上させれば、“お、ねだん以上”になる」と似鳥会長はいう。(朝日新聞Digitalの記事より)



【我々はニトリからなにを学ぶべきか】

ニトリから学べることは、ターゲット層と商品戦略を同時に考えるべきだ、という点。

都心型に勝機あり、と見出したら、買いに来る潜在顧客は、なにが欲しいのか?なにを買いに来るのか?という仮説を立てた上で、顧客層が買いやすい商品に絞り込んだ。

この時に重要なことは、ターゲット層を人口統計的な、年代とか性別、職業で絞るのみでなく、「ちょっとくらい高くてもいいからおしゃれでかわいいものが欲しい」「機能性が高ければ、値引きがなくて買う」という価値観をベースに絞ること。

そして、このような価値観を持つ人たちがどんな行動をするのか、をいう仮説を立て、商品ラインアップを決めていけばよい。

マーケティングの目的は、顧客が持つ問題を解決することにある。「顧客が困っていることは何か?」「顧客が求めているのは何か?」を常に考えていられる企業体質にすることで、顧客の潜在的なニーズを掴むことができる。

ニトリの好業績は、その良いヒントになる。



■目次

… 1. 特集 「業績好調のニトリに学ぶ、ターゲティングと商品マトリックス思考」

… 2. コラム「リピートしたくなる美容院」

… 3. 書評「スター・ウォーズ学」

… 4. ワンポイント 時間術「その2時間はいくらで売れるのかを考えろ」

… 5. 編集後記

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