豊浦彰太郎のDAZN・MLB放送後記「2つの課題の解決に加え、新たな価値も創造した前コミッショナーのビジネス手腕」

豊浦彰太郎のDAZN・MLB放送後記「2つの課題の解決に加え、新たな価値も創造した前コミッショナーのビジネス手腕」

6月13日(火)は、午前9時10分からDAZNで、現地時間12日のアストロズ対レンジャーズ戦の中継を担当した。レンジャーズの先発はダルビッシュ有、そしてアストロズでは前日に日米通算2000本安打を達成した青木宣親がスタメン出場と、日本のファン的にも注目度の高いゲームだった。本来、ともにテキサス州に本拠地を置くこの2球団の対戦は、同州の州旗にちなみ「ローンスター・シリーズ」と呼ばれる人気カードだ。

もっとも、2013年以降はアストロズがナ・リーグ中地区からレンジャーズと同じア・リーグ西地区に移ってきたため、それまでの純粋なインターリーグでの対戦時に比べると希少価値が減じた印象は否めない。何せ、今季だけで19試合もカードが組まれているのだから。むしろ、MLBとしてはア・リーグ東地区のヤンキース対レッドソックス、ナ・リーグ西地区のドジャース対ジャイアンツのような因縁の注目カードになって欲しい、というとことか。

そして、このシリーズ、通算ではレンジャーズが大きく勝ち越しており、昨季に至っては15勝4敗だった。しかし、今季は両軍の勢いを反映し、放送時点でMLB全球団トップの勝率.688を誇るアストロズが、地区4位のレンジャーズを6勝1敗と圧倒していた。しかし、この日はみなさんご存知の通り、ダルビッシュ有が7回を1安打の好投を見せレンジャーズが勝利し、先のワシントンDCでのナショナルズ3連戦も含め4連勝とした。

ここで、アストロズがア・リーグに「引っ越し」してきた経緯についてお話したいと思う。それまで、アが14球団、ナが16球団とリーグで異なる球団数としていたのにはそれなりに訳がある。ともに偶数としておかねかれば、毎日どこかの球団が試合を組めずにあぶれるか、毎日どこかでインターリーグ戦が組まれその希少性が失われてしまうからだ。それなのに、なぜMLBは2013年からアストロズをア・リーグに移し、両リーグ同球団数にすることとしたのか・・・

その背後には、MLBと選手会が抱える問題点と、それを他の問題解決策に利用するどころか、MLBに新しい価値とビジネスチャンスを創出した当時のバド・シーリグ・コミッショナーの英知と戦略があった。これは、一般のビジネスマンも学ぶべき点がある問題解決ストーリーだ。

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