社会主義現代化強国への道とは?

 習近平政権二期目に入る中国共産党大会が終えてほぼ2ヵ月。集団指導体制時代だった江沢民、胡錦濤政権時代に比べ、習近平氏の一強体制を強くうかがわせる大会だったようだ。演説時間は3時間半に及び、30年以上かけて「社会主義現代化強国」になると宣言した。前半の15年で基礎を固め、後半の15年で本格的な強国になるというのだ。これまで中国は社会主義国を建設した毛沢東思想の後、鄧小平氏による改革開放路線により中国の成長・発展を遂げてきた。習近平氏は改革開放の思想を否定したわけでなく、中国本来の社会主義という原点の思想を忘れずに強国化を図るという点を強調したかったのだろう。改革開放を続けるとしても、その思想の基本には"社会主義"という中国本来の思想をきちんと守り、単にGDPの量や成長率でアメリカなどと競争しているのではないという相違を示したのだ。

 いまや豊かさや成長速度、技術革新などではアメリカと肩を並べる大国として世界で認められるようになった。となれば、習近平氏の今後の目標は単にアメリカを追い抜くことではなく、社会主義の旗を降ろさず発展することだ、と考えたのだろう。それこそがアメリカと対峙する中国の最大の特色となり、世界をリードする習近平思想になるというわけだ。

 この政策を実現するのは、単なる経済競争に勝てばよいということにはならない。第一期で進めてきた腐敗汚職の追及をさらに維持強化し、堕落した資本主義国の豊かさとは違うところを見せる。と同時に格差の是正を図り、いわゆる中間層をぶ厚く育てることで社会の安定を図りたいという狙いもあるとみるべきだろう。

 もう一つは軍事的にも強国になるという目標だ。中国は古来から陸軍国だった。広い中国大陸を統治するには強い陸軍があればよかった。しかし今後世界の統治、強国を目指すには陸軍だけでなく海軍、空軍、宇宙、サイバー空間などにも目を配らなければならない。アメリカと”太平洋を統治しよう”と呼びかけたのも海・空・サイバーなどの分野でもアメリカと肩を並べる必要があるとみているのだ。

 さらに海と陸の”一帯一路”構想の実現にも海洋国家を目指すことが必然なのだろう。30年かけて実現したいとするのは、その位の年月を必要とする大構想戦略ということなのだ。

 一期目の習近平政権は腐敗追及などが話題になったが、二期目に入りこれまでの構想、戦略が一つの形になって現れてきた。日本は南シナ海の海洋進出ばかりに気をとられているが、中国の習近平政権の二期目の構想、場合によったら三期目の背景についてもじっくりと分析し対応戦略を考えるべきではないか。

【財界 2018新春特別号 第462回】