中国化に染まるアジア

 約2週間にわたって開かれていた中国の全国人民代表大会(全人代)=国会が閉幕し、習近平主席の一強支配が今後5年間は続く布石が打たれた。2期目の目標として「2020年までに小康社会(いくらかゆとりのある社会)」を実現するとともに、"中華民族の偉大な復興"を目標とする「社会主義現代化強国」を目指して中国革命100年にあたる50年までにアメリカと並ぶ世界の覇権国家を建設すると宣言した。

 習近平氏は、1997年の党大会で得票順が最下位ながら、151人の中央委員候補に選ばれる。当時、新総書記となった胡錦濤氏と中央軍事委主席だった江沢民氏が派閥争いをする中、黙々と党務に励み中央委員、政治局常務委員に抜擢される。しかし、12年の第18回大会で総書記に就任すると腹心の王岐山氏(今回の全人代で副主席に昇進)をトップにした汚職官僚の摘発に乗り出した。軍や官僚のトップを含め約21万人を逮捕し、一挙に権力基盤を固めてしまう。腐敗官僚の退治は、ライバルを倒すとともに国民の拍手喝采を得て人気を博した。

 一方、経済では公共事業に力を入れるとともに"一帯一路"政策を公表。EU3拠点と中国を結ぶ陸路の新シルクロードを北部・中部・南部に建設すると同時に東アフリカと東南アジアをつなぐ海のシルクロード構想を立て、パキスタンやバングラデシュに資金援助して湾岸建設に励んでいる。この資金は自ら創設したアジアインフラ投資銀行(AIIB)のほか既存のアジア開発銀行などに出資を求めようとしている。

 さらに安保外交分野では陸軍をリストラし、海・空・宇宙・サイバーなどに力を入れ出した。南シナ海からアジア・太平洋やインド洋の海洋進出に力を注ぎ太平洋をアメリカと二分して支配する構想も打ち出した。また20年には中国版GPS(衛星測位システム)35基を独自に運用。22年には宇宙ステーションを完成させたいとしている。まさに習政権は社会、経済、外交、安保と全地球規模の壮大な構想を立て実現に向けて走り出しているのだ。

 このほか次の産業革命を引っ張るとみられるAI(人工知能)分野での科学技術予算、モバイル端末保有台数、重要論文の発表数などでもアメリカと並ぶ勢いとなっている。また、中国のインターネット人口は7億人を超え、アメリカの人口の2倍以上でビッグデータの集積も世界一といわれるほどだ。

 かつてアジア経済は日本とアメリカが中心に動いていた。しかし、今や中国がこれに並び、うかうかしていると今後のアジアは中国を中心に動く時代が近づいている。

【財界 2018年4月24日号 第469回】

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