■トランプ氏と大統領選・米国経済が落ちる理由・JXTG株と朝日インテック株等
大好評発売中の『2019長谷川慶太郎の大局を読む』(発行:李白社、発売:徳間書店)では、貿易戦争から覇権戦争へと様相を変えた米中の争いを中心に、人手不足とキャッシュレス化が襲う日本、右肩下がり経済のヨーロッパ、明暗が分かれたBRICSなどについて詳述しました。ネット書店や全国の大手書店で入手できます。ぜひご一読ください。
●シリアからの米軍撤退をきっかけに辞表を出したマティス国防長官
ケリー大統領首席補佐官とマティス国防長官が昨年12月末にトランプ政権から去りました。ケリー氏はトランプ大統領による事実上の解任で、マティス氏は自ら辞表を12月20日に出したことによるものです。ただしマティス氏の場合、業務引き継ぎの期間を十分に取るために今年2月末での辞任を希望したのですが、トランプ大統領はそれを拒否して辞任時期を2ヵ月前倒したのでした。というのも、マティス氏が辞表で「同盟国に敬意を払い、悪意に満ちた者や戦略的な競争相手に注意を払うべき」と訴えたのを、トランプ大統領は暗に自分を批判したというふうに受け取ったためです。
トランプ政権にとっては、ホワイトハウスの運営を統括し法案成立に向けて連邦議会との調整役も担うという重要ポストの大統領首席補佐官が代わるのももちろん痛手ですが、それ以上にマティス氏が去るのは大打撃となります。マティス氏は本当に惜しい人材です。マティス氏が辞任を決意した直接のきっかけは、シリアからの米軍撤退を思いとどまるようにとの進言をトランプ大統領が聞き入れなかったことでした。シリアから米軍が撤退すると、弱体化しているシリアの過激派組織のIS(イスラム国)が息を吹き返すに違いありません。そうして再びISが勢いを増すと、シリアはIS化してしまいます。
シリアから米軍が撤退すれば、ロシアが中東で勢力を伸ばすという見方もありますが、実際にはロシアには中東を治めるだけの力量はありません。今でもロシアがシリアに置いているのは空軍だけであって、地上部隊を派遣するという余裕はないのです。
確かにトランプ大統領はアメリカ国民に対して、アメリカ・ファーストということから他国の揉め事には軍隊を出さないと公約してきました。しかし、もともとはアメリカがイラク戦争を仕掛けて中東が混乱に陥ったためにISが台頭してきてシリアも内戦状態になったのです。とすればアメリカにはシリアを安定させる責任があります。にもかかわらず、まだ紛争の残っているシリアから米軍を撤退させるというのは無責任です。マティス氏はそのような無責任なことはできないと理解していました。