飯塚玲児の「郷土の味」逍遥・古代の島のおもてなし料理「ひきとおし」(長崎県壱岐島)

 今もってなお「邪馬台国はどこにあったのか」という歴史議論が続いている。その邪馬台国の女王、卑弥呼の支配下にあったとされる島国が壱岐國つまり壱岐島である。博多から高速船で1時間余と非常に近い島だが、行政上は福岡県ではなく長崎県に属している。

 壱岐島は『魏志倭人伝』では「一大國」と表記され、他の史書では「一支國」(いきこく)と書かれている。日本の古代国家の中で、その王都がわかるのはこの島だけだという。

 その王都というのが原の辻遺跡。日本最古の船着き場の復元模型なども見ることができ、歴史ロマンがかき立てられること請け合いである。

 そんな島国に古くから伝わる「ひきとおし」なる鍋料理がある。魏志倭人伝の頃からなのかは不明だが、そもそもは遠来の客などを自宅の奥座敷に「引き通して」味わってもらった、というおもてなし料理である。



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