[歴史発想源] <和魂の酋長・南洋雄飛篇>第五回:武力支配の大きな代償「左拳」

邦人未踏の南の島に経済を根付かせていく、ベンチャー精神旺盛な土佐っ子・森小弁。その士魂で、現地の第酋長や部族たちから信頼を獲得していきます。

しかし、武力による制圧を進めていった結果、森小弁はとてつもない代償を支払わなければならないことになるのです…。

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南太平洋と日本の架け橋となった日本人の大酋長・森小弁の生き様を描く「和魂の酋長・南洋雄飛篇」(全8回)、第5回をどうぞ!

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▼歴史発想源「和魂の酋長・南洋雄飛篇」〜森小弁の章〜

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【第五回】武力支配の大きな代償「左拳」

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■安全な商圏を作るため、武装を強化

日本人がまだ上陸したことのないトラック諸島に、たった一人で住み着く事になった青年、森小弁。

いまだ原始的なトラック諸島の部族の中に貨幣制度を持ち込み、島民たちに生産意欲を湧かせ、日本への主要輸出品であるコプラを安定的に買い取る仕組みを作っていきました。

森小弁が本拠地にしていたのは、トラック諸島の中のウェノ島、当時はモエン島という名前だった島ですが、森小弁を仲間だと認めてくれた大酋長マヌッピスの部族の他にも、トラック諸島にはそれぞれの島に数多くの部族が点在していました。

森小弁が現地の部族と分かり合ってきたといっても、それは大酋長マヌッピスが統率する、ウェノ島北西部のイライス村周辺という小さな範囲の中の話。他にもまだまだ、現地の部族は方々にいるのです。

いくつもの部族がひしめきあっている所では、当然衝突も起こるもの。この頃も、トラック諸島の中では凄まじい部族間闘争が頻発していたのですが、商売をしに来ている森小弁にとっては、商圏を拡大するためにはこの部族間闘争は何とかして乗り越えていきたい問題でした。

しかし、ここには国家も秩序も法律もない。しかも部族によって文化も違えば言語も違う。

そんな人々の中に入り込んでいくにはどうすればいいのか。

それはやっぱり、実力のある者が実力で押さえつけていくという方法しかないだろう、と森小弁は考えます。

敵意を見せる周辺の部族に勝つためには、それだけの戦闘力を持たなければなりません。

そうなると、森小弁一人でできることは限られています。



そこで、森小弁は現在仲良くしている部族の戦闘力をもっと強くして、その部族の力を利用して他の周辺の部族を征服していこうと画策しました。

森小弁は大酋長マヌッピスに、

「他の部族との闘争や、スペインの開拓者の侵略などに負けないように、この部族ももっと合理的な戦い方を学ぶべきだ。自分も一緒になってこの部族のために戦ってあげるので、自分が日本で学んだ戦い方を教えてあげよう」

と提案します。

森小弁は高知に在住していた若き日に、軍人養成学校「海南私塾」に通っていましたから、兵学や剣術など戦いに必要な知識と技術をひととおり学んでいるのです。

そして、森小弁は日本刀を一本持っていたので、その剣術を実演して見せることで、マヌッピスの部族の男たちにその剣の使い方を感心され、提案は快諾されました。

日本の貿易船とのコプラの売買で儲けた資金を元手に、森小弁は世界の常識となっていた連発式の銃を購入し、マヌッピスの部族に近代兵器を持ち込んでいきます。

近代銃を持ち訓練を重ねることで、マヌッピスの部族の武装力は上がっていき、周辺の部族はなかなか手出しができません。

周辺の部族からの脅威が減ってくるため、森小弁はより安全に商売を行なう事ができるようになりました。

また「マヌッピスの部族には到底勝てない」と思い知って服従を申し出てくる部族が次々に出てきて、新たな商売に応じる部族が増えていったのです。



そんな森小弁の快進撃に驚いたのは、定期的に日本からトラック諸島に貿易船でやって来る日本人の貿易従事者の面々でした。

船を着けるたび、森小弁は島内で孤立するどころか、…

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