「相続税は税額ゼロなら申告しなくてもいい?」「なぜ先進国で日本人の賃金だけ下がっているのか?」『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

Shutterstock/isak55



あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします。

今回は、

「相続税は税額ゼロなら申告しなくてもいい?」

「なぜ先進国で日本人の賃金だけ下がっているのか?」

の2本立てです。

●相続税は税額ゼロならば申告しなくてもいい?

前号では、「相続税は実は、相続税額そのものよりも税理士報酬の方が高くなるケースが多い」ということをご紹介しました。そして、相続税の申告は、頑張れば自分でもできるし、税務署に手伝ってもらって自分で申告することが、実は本当の「相続税対策」になるということをご説明しました。が、どうしても、自分では相続税の申告などできない、という方もおられると思います。かといって、税理士に依頼するのはもったいないものです。なので、今回は、相続税の申告をしなかったら、どうなるかということについて、ご説明したいと思います。

まず、どういうときに相続税の申告をしなければならないのかということについて、確認しておきますね。相続税法では、誰かが死亡したときに、その人の遺産額が基礎控除を超えた場合に、申告の必要があるとされています。基礎控除は「遺産がこれ以下ならば相続税はかかってきません」という基本的な課税ラインのことです。そして、基礎控除は定額の3000万円プラス法定相続人一人あたり600万円というふうに設定されています。

だから、法定相続人が3人だった場合は、

600万円×3人+3000万円=4800万円

となり、遺産の総額が4800万円を超えた場合に相続税の申告が必要になります。

●相続税無申告のペナルティーとは?

そして相続税の申告が必要なのに、申告していなかったら、どのようなペナルティーがあるかというと、次のようになります。

申告が必要なことに後から気づいて、自発的に期限後申告をした場合は、納付税額は5%増しになります(無申告加算税)。ただ、申告期限から2週間後までに申告していれば、この無申告加算税は課せられません。2週間までは猶予があるということです。

次に、申告の必要があるのに申告しておらず、税務署の調査、指導により申告したような場合は、相続税額を15%増しで払わなくてはなりません(無申告加算税)。またこの無申告加算税は、納付税額が50万円を超える部分に対しては20%かかります。

また無申告加算税だけじゃなく、延滞税もかかる場合があります。相続税は、相続が起きた日(認知した日)から10か月以内に納付しなければならず、これに遅れた場合は、延滞税がかかることになっているのです。延滞税は、延滞が2ヶ月以内の場合は2.9%、それ以上延滞した場合は年9.2%です。消費者金融並みの高利率です。

●最終的に税額がゼロになれば罰則はない

まあ、このように、申告の必要があるのに申告していなかったら、けっこうな割増し税を払う羽目になるわけです。が、相続税の場合、申告が必要なケースでも税額自体は発生しないことがあります。

というのも、相続税は、基礎控除以外にも様々な控除制度があるので、結果的に税額がゼロになるというケースはけっこう多いのです。相続税額というのは意外に少ないもので、配偶者控除を使えば、相続資産がだいたい2億円までは相続税はかかりません。また相続人に配偶者がいない場合でも、家などがあれば、相続資産がだいたい5~6千万円くらいまでは、相続税はかかりません。しかし相続税では、基礎控除以上の遺産があれば、税額が出る出ないに関わらず、相続税の申告をしなければならないということになっています。だから相続税はゼロなのに、申告のために、税理士に頼むという人もかなり多いのです。その結果、税額はゼロなのに、高い税理士報酬を払ったという遺族もけっこう多いのです。

ところで、相続税の申告をしなかった場合のペナルティーというのは、先ほど述べたように、納めるべき税金に割増しして納付することになっています。が、これらのペナルティーはすべて「納めるべき税金の●●%」というふうに定められています。ということは、納めるべき税金がなければ、ペナルティー的な税金はかからないのです。つまり、はっきり言えば、「もし相続税の税額がゼロであれば、申告の義務があったとしても、申告をしなくてもペナルティーは何もない」ということなのです。

また相続税のいろんな控除というのは、申告しなければ受けられないものではなく、条件さえ満たしていれば、誰でも受けられます。だから、「申告をしていなければ控除が受けられずに税金がかかる」ということもないのです。これは、国税局にも確認済みです。税理士の中には、「もし申告をしていなければ本来税額がゼロになるケースでも、控除が受けられずに税金が課せられる」というような脅し文句をホームページなどで並べている人もいますが、これは嘘です。一人でも多くの顧客を取り込みたいからそういうことを言っているだけです。

もちろん相続税法の上で、厳密に言えば、たとえ税額がゼロになったとしても、基礎控除を超える遺産があれば、申告は必要という事になっています。またもし、税額が発生するのに、申告をしていなかったら、前述のように多額のペナルティーを払わなくてはなりません。その点を留意し、くれぐれも、申告をするかどうかの判断は自己責任で行ってください。

●なぜ先進国で日本人の賃金だけ下がっているのか?

この続きを見るには

(4,459文字)

¥360(税込)

購入して続きを読む