■ 2. 世界の俯瞰図
日本で発行されている大手新聞社の記事の9割は、日本国内の記事で構成されています。しかし、このグローバル化した世界では、政治や経済、テクノロジーや食べ物までもが、一国だけで完結することはありません。このコーナーでは、世界を俯瞰的に見ながら、日本の立ち位置を考えていきたいと思います。
今週は、いよいよフランスの大統領候補筆頭格に躍り出たマリーヌ・ル・ペンにつきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
本メールマガジンで2015年から幾度に渡ってお話ししてきましたフランスの右翼政党(と呼ばれる)「国民戦線」の代表マリーヌ・ル・ペンは、ついに現職オランド大統領が出馬を断念したことから、次のフランス大統領の筆頭候補に躍り出ました。
欧州では極右などとも言われますが、日本から見れば中道左派程度で、このあたりは欧州全体がどこも市民が強い国家ゆえ日本とは違い、全体的に大きく左に位置しているのを理解する必要があります。
マリーヌ・ル・ペンは、2012年フランス大統領選挙の第1回投票で10人の候補者中3位に入り、ついに現在の好敵手であり、妻への不正給与が取りざたされ失墜中のフランソワ・フィヨン(フランス共和党)を抑え、一番大統領に近い人物と目されるようになりました。
もともと父親が創設した「国民戦線」を、時代にあわせてソフトに作り変え、反ユダヤ主義的発言を理由に父親を除名した経緯もあります。
極右と言われていますが、あくまでもマリーヌが有権者へ送るメッセージは、国民戦線はムスリムに反対しているのではなくフランスに潜む漸進的イスラム化に反対している、と何度も公言しています。
また、注目すべきはマリーヌ・ル・ペンの姪、マリオン・マレシャル=ルペンです。
「国民戦線」の初代党首ジャン=マリー・ル・ペンの孫娘にあたり、2012年フランス議会総選挙において、22歳の大学生ながらフランス共和政史上最年少の国民議会議員となったマリオン・マレシャル=ルペンは、マリーヌのデジタル戦略参謀を務めると言われています。
米国大統領になったドナルド・トランプのデジタル戦略を、娘のイヴァンカと夫君であるクシュナーが勤めたように、インターネットでの発言やお作法は、世代によるところも大きのは事実です。
現在48歳のマリーヌにとって、デジタルネイティブと呼ばれる27歳のマリオンの判断は欠かせません。
もし、今年フランスの大統領選挙で、マリーヌ・ル・ペンが大統領になると、いよいよフランスがユーロから離脱することが考えられます。今週2月5日、マリーヌは決起集会を開き、大統領選の候補者としては初めて公約を発表しました。
「大統領に就任したら6か月以内にEU残留か離脱かを問う国民投票を行います」と。
また、マリーヌのアドバイザーのベルナール・モノは、今月リヨンで開かれた集会で、「金融の主権を取り戻す」ことがマリーヌの政策の重要な柱で、フランスの通貨は恐らく「新フランス・フラン」という名称になり、当初はユーロと等価に設定され、その後はEU通貨バスケットに対する変動幅を20%までに制限する」と発表しました。
そして現在、ギリシャがユーロを離脱する「グレグジット」が再燃し、ここからもユーロ崩壊に向かう可能性が極めて高くあります。
こちらは、「新ドラクマ」が通貨となり、かつての欧州通貨単位(ECU)のような各国通貨のバスケットを採用してユーロに代えるような動きになるでしょう。
2017年は、フランスのほか、欧州の主要国家ドイツやオランダでもトップの交代が囁かれている選挙の年です。
トランプを見る限り、民主主義が資本主義に勝ったとも言えますので、もともと市民が強い欧州では、資本主義と官僚主義に支配されるユーロに異を唱える人が、年々増えています。
昨年、英国と米国で起きたことは、官僚と大企業の支配を覆す「革命」に他なりません。
国益(実は現体制)vs国民。
中央主権vs分散。
本年は、欧州にとって天下分け目の年になるでしょう。
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企業ブースですので場所が大変狭く、何卒お早めにお越しいただけますと幸いです。
高城未来研究所【Future Report】
Vol.295
■目次
… 1. 近況
… 2. 世界の俯瞰図
… 3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
… 4. 未来放談(待望の新コーナーです!)
… 5. 身体と意識
… 6. Q&Aコーナー
… 7. 連載のお知らせ