【世界の俯瞰図】
日本で発行されている大手新聞社の記事の9割は、日本国内の記事で構成されています。しかし、このグローバル化した世界では、政治や経済、テクノロジーや食べ物までもが、一国だけで完結することはありません。
このコーナーでは、世界を俯瞰的に見ながら、日本の立ち位置を考えていきたいと思います。
今週は、移民に関していくつもの大統領令を発し、世界を驚かせているドナルド・トランプの政策につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
トランプ米国大統領は、先週金曜日1月27日にあらたな大統領令に署名し、シリア、イラク、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの人の入国や、すべての国からの難民の受け入れを一時的に停止しました。
これに対しニューヨーク・ブルックリンの連邦地裁判事は、翌日28日に大統領令の効力を一部停止し、ビザなどの滞在資格を持つ人を強制送還しないよう米政府に求めるなどして、国内外で混乱が広がっています。
この混乱は、ドナルド・トランプは大統領令を発布するにあたり、司法省法制局など専門部署に予め法的整合性について点検させる慣例を破り、自己のブレーンによって作られた命令書に署名している点にあります。
すなわち、官僚支配のワシントンD.C.システムからの脱却を図っているため、根回しなどが行われていません。
その上、トランプの中東7カ国からのアメリカ入国拒否リストを見れば、この7カ国を指定したのはトランプではなく、オバマ政権であることがわかります。
また、入国やグリーンカードを含むビザはいつでも効力停止できるもので、あくまでビザは権利ではなく許可されるものであることも理解する必要があります。
また、既存のマスメディアを官僚支配の一翼と考えているトランプ大統領は、自らツイートし、空港で拘束されたのは32万5千人のうちたったの109人で、空港の混乱はデルタのコンピュータの不具合だ、と発言しています。
トランプ大統領の政策顧問のミラーは、次の30日間でビザ発給のための審査手続きを作成すると表明。
本来、どんなに短くても90日間はかかる仕事を、30日間でやり遂げると公約し、この突然の大統領令は、新大統領就任直後に移民法が変わる前に入国しようとするあらゆる人物をスピーディーに阻止する点にあると言われています。
ちなみに、名大統領として誉れ高いフランクリン・ルーズベルトの日本人強制収容も大統領令によるものです。
このトランプの行動は、人権や感情などを一度さておけば、今後、米国人以外の者が、仕事を得るため米国を目指すのに大きなリスクがあると理解させることも意味しています。
一方、難民・移民の入国を制限する大統領令を擁護しないよう司法省弁護士に指示したイェーツ米司法長官代行を、トランプは早速解任しました。
イェーツは、オバマ大統領任命による人物で、トランプは後任にバージニア州東地区ダナ・ボエンテ弁護士を即座に指名しています。
ビジネスは速度が勝負で、現在の米国は「緩やかな鎖国」に急速に向かっています。
世界の人々が集まる米国、世界警察としての米国、そして世界通貨を担保してきた米ドル。
この座を、すべて放棄しようとしているのです。
いま、世界はなにが正しいのか個人に考える時間を与える前に、素早く変化を続けていくでしょう。
高城未来研究所「Future Report」Vol.294
■目次
… 1. 近況
… 2. 世界の俯瞰図
… 3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
… 4. 未来放談(待望の新コーナーです!)
… 5. 身体と意識
… 6. Q&Aコーナー
… 7. 連載のお知らせ