「夏期講習を活かす方法を探る」…4年・5年編

夏期講習の4年・5年は、まだ受験までに時間がある時期です。新年度からひた走ってきた塾の勉強に一息入れつつ、振り返る良いチャンスと考えてください。長い夏休みですが、無計画に始まってしまうと、何もできないままに40日が過ぎてしまいます。少しでも効果的に過ごして、9月以降に活かしていきたいと考えていらっしゃる方々のために、夏期講習を乗り切るヒントをいくつか紹介していきましょう。

〇学校の宿題をちゃんとやりましょう。

塾の勉強を優先すると、どうしても小学校の夏休みの宿題が後回しになってしまいます。また、夏休み終了間際に慌てて取り組んで、中途半端なものになったり、予想外に時間がかかったりしますね。まずは、学校の宿題をどのように進めるかの計画を先に立てておきましょう。その際、夏期講習が始まるまでに半分以上終わらせることを考えてください。プランに沿って、きちんと計画通りに取り組むことは「頭の使い方」の練習に役立ちます。特に、自由研究は、予測したり、文章にまとめたり、効果的な写真や図表を考えたりと、プレゼンテーション能力を高める絶好のチャンスです。最近、話題になっているアクティブ・ラーニングでも「計画する力」と「伝える力」は大切な要素になっています。中学入試に必要な力を養うのにとても役立ちます。「学校の宿題」は、邪魔者扱いされがちですが、あなどれません。是非、丁寧に取り組ませてあげてください。

〇講習中のカリキュラムを事前に入手しましょう。

塾からの案内状だけでなく、ホームページ上にも夏期講習の履修単元の見出しは掲載されていますね。サピックス以外は、講習教材を夏休み前に事前に渡してくれますから、より分かりやすいはずです。夏期講習を有効に活用するためにも、カリキュラムを知ることから始めてください。

[復習単元の学習法]

これまでの塾のテストで分かった苦手な単元や分野が、夏に扱う復習単元に重なっていれば、基礎内容だけでも講習前に復習しておく必要があります。通常授業に比べて進行が速い講習では、一度やった単元だからと言う理由で、基礎が分かっていることを前提に問題演習が進んでいくのが普通です。

苦手単元なのに講習中で扱わないようなら、すぐに解決しなければならないのか、もう少し先まで放っておいても大丈夫なのかを判断する必要があります。例えば、夏期講習で「速さ」を学習する予定なのに、時間計算が苦手な場合は、すぐに解決しておかなければなりません。一方、体積の単位換算は苦手だけれど、夏期講習で「立体図形」をやらないなら、後回しにしても良いという具合に判断していきます。

[予習単元の学習法]

数年前までは、4・5年生の夏の講習では多くの塾が復習単元中心でしたが、最近では復習内容に加えて、9月以降に履修する単元を先取りすることが多くなっています。先取りした予習単元については、サピックスのように9月に入ってどんどん先に進む場合と、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーのように2学期にもう一度扱ってくれる場合があります。ですので、講習で予習単元が出てきたには、その時点でしっかり理解を深める必要があるのか、もう一度改めてその単元が出てきたときに解決できるものなのかは、ご家庭では判断が難しいと思います。こういった場合は、塾の中で信頼できる先生を見つけて相談に乗ってもらうのが一番です。今後のためにも、どの先生に相談するのかも決めておくことが大切です。それが難しければ、信頼できる第三者を見つける必要があるかもしれません。

どの場合にしても、

① ただでさえ、初見の単元は理解に時間がかかるのに、講習での予習単元は授業進度がハイペースになるので、いつもの感覚で取り組むとほとんど頭に残らない。

② 9月以降に改めて扱う際に、講習授業の内容をベースにして通常授業が進むことがあるので、講習である程度理解しておく必要がある。

と言うことは、頭においておく必要があるでしょう。

これらのことを考えると、やはり講習前に予習しておくのがおすすめです。通常授業であれば、「今週はこんなことをやるんだ~。」程度で充分でしたが、講習テキストを事前に渡されている場合では、基本問題の数問は触っておくと、格段に授業中の理解が深まります。特に、理科・社会は日替わりで単元が進んでいくので、問題を解くのに精一杯になってしまいます。事前に、テキストの説明部分は読んでおくと良いでしょう。テキストが当日配付の場合は、市販の参考書・問題集を活用しましょう。

〇各科の留意点

[算数]

4年の場合、植木算・和差算・倍数算などが扱われますが、これらの単元は、線分図を利用して「手を動かして解く」分野です。今後出てくる「複雑な線分図で解く問題」を解けるようになるための大切な練習です。この機会にしっかり描き慣れておくと、5年・6年での勉強に大きく役立ちます。

5年生では、ほとんどの塾で「比」を先取りしていきます。簡単な整数の比に直すことや比例式の計算は事前に出来るようにしておくと、内容を理解することだけに頭を使えますね。考え方や問題の仕組みを理解することにしっかり頭を使えるように、式を処理したり、計算するだけの単純操作には慣れておく必要があります。

もう一つは「速さ」です。5年では、20分=1/3時間のように、時間を分数で扱うことが普通に出てきます。「速さ」を苦手にしているのであれば、時間・分・秒の換算を練習しておきましょう。

[社会・理科]

社会・理科共に、講習中は平常月の2倍のスピードで単元が進んでいきます。ともすると、宿題に出された問題だけを解くだけになりがちです。まとまった時間が確保できる夏休みは、社会・理科の知識分野を固める好機です。講習テキストの宿題に加えて、以下のような取り組みを付け加えると、大事な知識がお子さんの頭の中に残りやすくなるでしょう。

4年の社会では、都道府県の名称と場所、県庁所在地のおさらいが効果的です。ゲームやクイズ感覚でお子さんと一緒に地図帳を開いてみてください。毎日のニュースで出てくる地名をすぐ調べてみるようにすると、地図上の位置関係が自然と頭に入ってきます。

5年では、今後の学習の中心となる日本の歴史の概要を掴んでおくために、漫画の歴史本をまとめて読ませておきましょう。もちろん夏だけでなく、今後の受験勉強に大きく役立ちます。講習が終わっても、いつでも読めるようにしてあげてください。

4年の理科では、動物や植物などの知識分野をまとめて頭に入れるチャンスです。ご家庭では、すぐに図鑑で調べる習慣が大切です。また、植物や昆虫は近くの公園や旅行先などで実際に観察すると、知識の定着だけでなく、今後の学習への興味を増すことに役立ちます。

5年は、力学や水溶液の性質などで「計算単元」が出てきます。比例、反比例の関係が中心ですが、これからの解法には「比」が使われることが多くなります。算数の「比」の理解が必須ですね。「比」の勉強は、算数だけでなく理科にも大きく役立ちます。スピーディーに正確に計算できるようにしておきましょう。

〇まとめ

さて、講習についてあれこれと書いてきましたが、多くのお母様が「これは大変だ。」と思われたことでしょう。実は、今まで書いた内容を全部完璧にこなすのはまず不可能なのです。受験勉強のポイントは「取捨選択」です。普段の学習もそうですし、夏休みの学習もそうなのです。ここに書かせていただいたことを、すべてやろうとするのではなくて、優先順位を考えて、1つでも、2つでも実行してもらえば、9月以降に目に見えるような効果が現れているはずです。

中学受験をうまく乗り越えたご家庭の様子を振り返ってみると、「家族のコミュニケーションの豊富さ」や、「家族の絆の強さ」がお子さんのモチベーションの基盤になっていることが多いように思います。家族全体で、中学受験に立ち向かっていく中で、親子関係がギスギスしたり、夫婦間や親族の意見の対立が出てきたりすることもあるでしょう。5年生の夏が、余裕のあるスケジュールが組める最後です。そのためにも、お子さんに家族旅行や行事参加も考えてあげてください。学習を兼ねた「楽しい思い出作り」は、理科や社会の勉強に役立つだけではありません。お子さんが、夏休みが終わったときに、「たくさん勉強した。頑張った。」という達成感とともに、「楽しかった。面白かった。」と思えるように、スケジュールの工夫をお願いします。

もちろん、疲れが残るほど、スケジュールをぎっちり組む必要はありません。基本は、「生活リズムを乱さない。」ことに尽きます。睡眠時間の確保は最優先にしてください。その上で、早寝早起きを励行して、普段はできない早朝散歩に取り組むのも良いですね。