入試直前期の過去問活用法とは

入試本番の直前期に入ると、塾でも過去問演習が行われ、家庭学習においても、過去問演習の比重が高まってきます。

 過去問の得点をエクセルで管理し、合格最低点にとどいたかどうかをチェックしている熱心なお母様方や塾の先生も多いようです。これで点数管理は完璧なのですが、それだけでは足りないのです。

 過去問演習では、点数が足りなかったのに合格出来る子、またその逆になってしまう子が毎年たくさんいます。それは、点数だけではわからない、「正解に潜む不正解の危険性」と「不正解の中にある正解の可能性」があるからです。

 合否ボーダー付近で合格を目指す受験生は、志望校ごとの全受験者の半数以上を占めるのが普通です。その子どもたちにとって、それまでの受験勉強での頑張りを生かすも殺すも、実は「過去問演習の取り組み方次第」と言えるのです。

では、意味のある効果的な過去問演習はどんなものなのでしょう。

今回は、そのことを詳しくお話しましょう。

まず、過去問演習の目的をはっきりさせておくことが大切です。

【過去問演習の目的】

① 時間配分を体にしみこませる。

② その学校特有の言い回しに慣れる。

③ 問題配列の癖に慣れる。

④ あと何点をどのあたりで稼ぐのかを見極める。

①②③は、どちらかと言えば失点を防ぐためのもの、④は得点力を高めるためのものです。

① 時間配分を体にしみこませる。

制限時間に対して問題数が多い、もしくは少ないという漠然とした感覚も大切です。そしてもう一歩進めて、「大問1から4までを30分ぐらいで済ませて、ここで20分を残しておいて、その後の複雑な問題にじっくりと取り組む。」とか、「国語の長文が、物語文と説明文の2題出るから、物語文を読むのに10分、その問いに答えるのに10分で、計20分かかる。知識問題から解くことにすると、これで30分かかるから、残りの20分で説明文を解けばいいんだ。」などと、時間の使い方の作戦を練ってほしいのです。

このように、何番あたりで何分と決めておき、途中で時計を見て、「急いでやったつもりなのに、意外に時間を使ったな。」とか、逆に「このぐらいゆっくりやっても大丈夫なんだ。」というように解くペースの確認を繰り返すことで、適切な時間配分が分かってきます。

② その学校特有の言い回しに慣れる。

問題文は、その語尾ですら学校ごとの癖があります。塾の試験では、ほとんどが「~を求めなさい。」ですが、入試では「~せよ。」という学校もありますし、「~を求めましょう。」という優しい言い方の学校もあります。小学生の場合は、語尾の違いですら気分が変わります。「~せよ。」にどきどきしてしまった子どもも実際にいるのです。

語尾だけではありません。普通は、「~の理由を答えなさい。」ですが、「~については~と考えられますが、~の場合には~と考えられます。その違いは何だと考えられますか。」というような回りくどい尋ね方の学校もあります。

設問の尋ね方が変われば、注目すべき箇所やポイントの探し方が変わってきます。

それ以外にも、「ただし、円周率は3.1とします。」とか、「ただし、棒の重さは考えないこととします。」というような“但し書き”の場所が、学校ごとに異なったりします。

③ 問題配列の癖に慣れる。

記述が多いのか、記号選択が多いのかは、これまでの過去問演習を通じて、すでに分かっていらっしゃるでしょうが、それだけでなく、記述なら、自由記述なのか条件記述なのか、記号選択なら複数回答なのかそうでないのかにも気を配ってください。「すべて選びなさい。」と書いてあるにもかかわらず、正解が1個しかない問題を出す学校もあります。

このように、大まかに出題形式をとらえた上で、次は難易度の配列を振り返ってください。

大問の1番から3番までは基本的な問題で、後半の2問がぐっと難しい(早稲田中・算数、桐朋中・算数など)、途中に難しい問題が差し込まれている(麻布中・算数、渋谷学園渋谷中・理科など)学校があります。

①の時間配分にもかかわることですが、算数であれば、短答式か記述式なのか。番号順に難しくなっていくのか、途中に難問が挟まっていないか。捨て問があるのか、ないのか。

ここまでの①~③はどれをとっても過去問演習に取り組む上では大切なことばかりですが、まだ合格点に届いていない受験生にとって最も重要なのは、最後の項目です。



記事の新規購入は2023/03をもって終了しました