「現代の風景」 私の理想のソニーストア
「ソニーストア」4店舗を統括するソニー・マーケティングの浅山隆嗣さん(カスタマー本部本部長)に前号ではソニーストア店舗への顧客の「入りやすさ」について話を聞いた。
そこで私は、入店したお客は「ソニーストア」にいったい何を求めるのだろうか、と思った。
今年九州の福岡に出店した「ソニーストア福岡天神」の周辺には、アップルストアやTSUTAYA、スポーツ専門店のNIKE(ナイキ)が軒を連ねていた。
だからだろうか、ソニーストア福岡天神が面している通りには学生や若い人が多く集まって来ているような印象を持った。
ソニーストア福岡天神が出店しているビルには福岡市の児童館も入居していた。そうした周辺事情を考えると、私はソニーストア福岡天神の主な客層は若い人になるのではないかと思ったものだった。
今の世の中は株高とはいえ、決して景気が良いようには思えない。街を歩いていても、「不況感」を身体で感じてしまうのだ。
だからたとえ欲しいモノがあっても、すぐに買うようなことはせずに、我慢したり安い代替品で済ませてしまうことが少なくない。でもソニー製品は、おおむね「高価格路線」の設定になっている。
いま風にいえば、「高付加価値」商品がメインである。その意図は、取材を通じて理解しているつもりだが、私と同じような「不況感」を抱いている若者は、ソニーストアに気に入った商品があっても買えないのではないだろうか、とふと思ってしまう。
私の疑問を率直に浅山さんにぶつけてみた。
浅山さんは、本音で説明してくれた。
「残念ながら、商品を買っていただく年齢層が高いのは事実です。(一眼デジカメの)αシリーズのラインナップにしても、かなり高価格帯の商品が多いです。大学生を含む若い方たちがアルバイトをして貯めたお金でどんどん買ってもらえる商品ではないことは、私も理解しています。
ただ、そういう若い世代の人でも、新しいiPhoneが発売されれば、高価格でも買いたいと思って買いますよね。つまり、それだけのお金を出してもいいという価値を(ソニー商品にも)認めていただければ、ある程度価格が高くても若い人にもお金を払っていただけると思っています」
浅山さんは直接言葉にはしなかったものの、「SONY」ブランドがかつてのような絶対的な力と認知度をいまは失っていると認識しているように感じた。
だからこそ、まずソニー製品の良さを知ってもらいたいということなのかも知れない。例えば、「Xperia」を使っている人でもSONYをよく知らなかったり、あるいはプレイステーションやウォークマンを使っているからといって、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」のことを知らない。
個々の商品に触れる機会があっても、ソニー全体の商品に接する機会が減っていると考えているのだろう。
だからこそ、少しでもソニー商品の良さを知る機会を作り、将来ソニーの顧客になってくれるように「ソニーストア」という形で投資をしているのだというのが浅山さんの狙いなのかも知れない。
そんなことを考えていると、浅山さんはソニーストア福岡天神で見たエピソードを紹介してくれた。