Apple、Googleは撤退。自動運転車はクルマの未来なのか ノンフィクション作家・立石泰則の「企業は人なり」 第34号



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「深眼」 自動運転車はクルマの未来か

今年の9月、IT企業の雄であるアップルとグーグルの2社が相次いで「自動運転車」から撤退することが明らかになった。

自動運転車の開発はIT企業しか出来ないと考えられてきたこともあって各方面に少なくない衝撃をもたらした。

断念した理由については、いろいろ報道されているが、概ね2つに絞ることができる。

ひとつは、自動車の車体、つまりハードの開発・製造がIT企業にとって思った以上にハードルが高かったことである。実際、グーグルが開発したグーグル・カーはデザインを含め評価は良くなかった。

つまり、実際の「もの作り」の経験のないIT企業には、自動車(ハード)そのものを製造することは無理だったのだと判断されたのである。

もうひとつは、既存の自動車メーカーが自動運転車を独自に開発し、日産は発売にこぎつけたし、トヨタやメルセデスなども発売を目指しており、彼らのほうが事業として進んでいたことである。

つまり膨大な開発費をかけて既存の自動車メーカーと競争しても、十分な利益が得られないと考えたのではないかという指摘である。

ただし、「自動運転車」といっても、アップルやグーグルと自動車メーカーとでは目指した内容に大きな違いがある。

たとえば、グーグルが目指した「自動運転車」は「完全自動型」と呼ばれるものでアクセルもブレーキもない、運転席すらないタイプだった。それを実現するには、複雑なシステムを必要とした。

他方、自動車メーカーは、障害物を避ける、つまりぶつからずに道に沿って走れれば良いという考えで自動運転車の開発を目指したため、グーグル・カーのような複雑なシステムを必要とはしなかった。

日本政府や米国運輸省道路交通安全局が定義した自動運転よれば、グーグルが目指した自動運転車は最高のレベル5である。それに対し、自動車メーカーのそれは、レベル2かレベル3である。

レベル2も3も、運転者が同乗することが前提である。レベル2では常時運転状況を監視操作することが求められ、レベル3では通常時ではシステムで動くものの、緊急時には運転者に切り替わることが求められている。2016年時点ではレベル3の自動運転車は販売されていない。

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