各界の第一線で活躍されている方の視点や発想をお聞きする「Pro’s Views」。
今回お話をして頂いたのは、浅草寺奥山門の揮毫をはじめ商品ロゴデザインや漫画題字、また企業研修や書道教室、多数の著作を出版するなど、多方面に活躍の幅を広げて活躍されている書道家・墨絵画家の成澤秀麗さん。現在は大学院生という一面も持つ成澤先生の視野や考えに迫ります。(2015年1月にPaddyサイトにて掲載されたインタビュー記事です)
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■最近の仕事のこと
現在は書道教育の通信教育を行なったり、表札のデザインを手がけたりもしています。関東に多数の店舗展開をしているデザインギフト会社と組んで、私の書と水墨画を使った表札やギフト商品を提供しているのです。
また今は、以前から学んでみたかった、文字デザインの研究をするために大学院に通っています。昨年3月に心理学の修士課程を終え、4月からは別の大学院の博士課程でデザイン心理学を研究しています。
スマホは常に持ち歩いていて、カメラをメモ代わりに何でも撮っています。昔は何でも手帳にメモしていましたが、今はdropboxなどもあるので、どんどん撮って保存したりiPhoneのメモアプリに書いたりして溜めています。ノートに書いて保管していても後になってからはなかなか見ませんし、量が増えてくると探すのも一苦労。引っ越しを機に本棚にあった専門書も全てスキャン業者に送ってPDFにしました。
そうやって、身の回りのあらゆるものがデジタルになってきました。書道家という仕事をしているのに手書きで書くことが少なくなっているということに、ちょっと葛藤は感じますけど。(笑)
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■世の中を見ること
私と同じ書道の分野の人との交流は,現状の知識や技術を見直すことができるといった良さはありますが,自分とは全く違う分野で「ものづくり」をしている人や何かを極めている人と交流していると,マインドにつながるような共通点をいくつも発見します。それで相手の方と一気に距離が狭まり会話が盛り上がるのが楽しいので,他分野の人たちと話したり情報交換したりすることが大好きです。
自分の立ち位置を知り反省することが出来ますし,モチベーションがさらに高まります。書道をやっていると家にこもって書いてばかりではないかと言われがちですが(笑),目を外へ向けて世の中で活躍している人たちのマインドに触れることはとても良い刺激になりますし,書の世界の人間であっても役立つことがたくさん見つかるんです。
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■出かけること
歩き回るのは好きですね。変な看板などを見つけると、ついカメラで撮ってしまいます。文字が面白いものも好きだし、看板に書いてある言葉と看板の雰囲気がマッチしていないものも好きです。 外国人が,日本語は他の言語と比べて難しいという理由が分かる気がします。漢字の歴史オタクですので他の人には何が面白いのか分からないというものも多く、後で写真を一人で見て笑っています。(笑)
海外に行くと、日本語で書いているものがつい気になります。アメリカで「蝿」と書いているTシャツを着ている人を見ましたし、先日行ったスウェーデンでは「髪」という字の看板を出している散髪屋さんもあったんですよ。
商品のパッケージを見るのも好きですね。大学院の研究で、商品の印象とフォントの印象が近いものは消費者の評価が高く、逆に遠いものも中途半端なものより評価が高い、ということが分かりました。文字がどのように人に印象を与えるのか、というのはかなり気にかかります。
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■お気に入りの風景
学会のためにスウェーデンのリンショーピング大学へ行き、休憩中に大学の近くで撮った風景です。リンショーピングはストックホルムよりも南西にある小さな街で、大学周辺には牧場などもあってとてものどかでした。この時期はちょうど日本は梅雨で27度もあったんですが、スウェーデンはとてもカラッとして初夏のような気候が続き,とても過ごしやすかったです。
学会で遠方に行くことが多いので、プライベートで旅行をするということはあまりないんです。行く機会があるとしたら、都市や観光地などではなく、何もないような田舎がいいです。今すごく気になっているのは、沖縄県にある久高島とかオーロラが見れる北欧の田舎などですね。
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■成澤 秀麗 (なりさわ しゅうれい)
書道家・墨絵画家。山形県出身。
2001年より書道家として独立し、墨絵画家、書道講師、企業研修など幅広い分野で活動する。第23回東京書作展にて内閣総理大臣賞・大賞を受賞。浅草寺奥山門揮毫、各地での個展などの実績多数。
ARTE ASPIRACION株式会社代表取締役。現在、文字のデザイン心理学を研究する大学院生としての顔も持つ。
『文字が変われば、ココロも変わる。』(学習研究社)、『名言なぞり書きで学ぶ』(総合法令出版)、『おとなのポケット書道』(中経出版)など、著書も多数。
▼「Pro's View」は当社が企画・運営する、風景を共有するスマホアプリ「Paddy」との連動企画です。スマホを持って、全国各地の魅力ある風景を探し出してみて下さい!