その昔のこと。某牛丼チェーン店で“十勝仕立て”の豚丼を味わったとき、「ああ、帯広に行きたい」と思った。
なぜ豚丼=帯広なのかわからない読者もいるだろうが、帯広名物といえば、何を置いても豚丼なのである。市内では専門店以外の飲食店もこぞって豚丼を提供しており、その数150店に上ると聞いた。
帯広豚丼を語るとき、欠かせない人物が二人いる。一人は晩成社を率いた十勝開拓の祖・依田勉三だ。1883年(明治16)に入植した勉三は、2種の豚を持ち込んで飼育を始めた。これが“牛肉より豚肉”という食文化の素地になった。