畳職人・鏡芳昭の「伝統文化論」(2)畳業界の今は危機的状況

日本の伝統文化である「畳」の業界の衰退の理由は、「日本人が和風より洋風の家に住むようになったから」ではなかった……!

1,300年以上続いた畳の文化が、ここ30年で衰退し始めているのはなぜか。色のついたカラフルな畳、水洗いができて色落ちもしないビニールの畳…。そんな一件面白いアイデアの畳が出てきても、ちょっと目を引く程度の影響しか与えられない奇策に過ぎません。畳業界を、畳文化を、再び復権させるための問題点とは何なのでしょうか。

「畳は、ワインに似ている」。畳の本質をそのように的確に表し、畳の本質を追求し続ける畳職人の方に、「伝統文化」について執筆をして頂きます。執筆者は、大正時代から続く畳店の4代目社長であり、また全国の畳店のネットワークを作ったり、畳職人とい草生産者との交流の場を多く作ったりと畳文化の復権に日々尽力されている、畳職人の鏡芳昭さんです。

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▼鏡 芳昭 (かがみ よしあき)

畳職人。山形県寒河江市出身。2008年、曾祖父が大正5年に創業した鏡畳店の4代目社長に就任。全国の畳店のネットワーク「畳屋道場」を設立し、畳屋道場株式会社代表取締役社長に就任。熊本県八代市のイ草生産農家が集まった「和たたみの里 熊本八代生産販売組合」を立ち上げるなど、生産者と畳職人の交流にも注力している。

有限会社鏡畳店

畳店のネットワーク「畳屋道場」

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『ビジネス発想源 Special』の「各界発想源」にて2012年4月に連載され大きな好評を頂いた『畳職人・鏡芳昭の「伝統文化論」』全5回を、mineに再掲載することになりました。この連載から、これからのインバウンド戦略の構築や新たなビジネスチャンスの発見に活かせるヒントを見つけ出して頂ければ幸いです。

それでは「伝統文化論」、第2回をどうぞ!

※[加筆] 連載当時の、読者の皆さんの質問に鏡芳昭さんがお答えする「Q&A」も掲載致しました!

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●畳職人・鏡芳昭の「伝統文化論」

    〜畳を見れば、経済が見える。〜(全5回)

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【第2回】 畳業界の今は危機的状況

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畳業界で、ずっと叫ばれてきた言葉があります。

「日本人は畳だ! だから畳は無くならない!」



畳は無くならないから、この商売も無くならない。

そういう楽観的な言葉です。

 

でも、現実はどうでしょうか。

畳の数は減少し続けています。

いくら叫び続けても、その現実は静かに着々と進行し続けているのです。



現在、日本の畳店の数は9,000店といわれていますが、実際に営業しているのは多めに見ても80%くらいではないでしょうか。

また、廃業していく畳店は、年々増え続けています。

一番の要因は高齢化・後継者不足で、更に今後もこの流れは続いていくことでしょう。

い草農家に関しては、ここ20年で約10分の1にまで減ってしまいました。

ここにも、畳店と同じような構造が見られます。



私は畳職人ですが、実は、…

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