自分のメールマガジンで『脳神経外科医・山川伸隆の「予防論」』を企画したのにその内容の「予防」の考え方を守っていなかった、『ビジネス発想源』の筆者・弘中勝は、2016年10月に右手の痺れに悩まされ、都内の整形外科にリハビリ通院することに。
そこで、弘中勝が「予防論」を連載された山川伸隆先生に実際に診察してもらおうと、山川先生が院長を務める三重県伊勢市の「いせ山川クリニック」まで行ってきました。
今回は『脳神経外科医・山川伸隆の「予防論」』の番外編として、弘中勝が山川先生の診察を受けた「山川先生の診察室」をお届けします。これはインタビュー記事ではなく、れっきとした「診察」です(弘中勝は保険証を提示し、診察料も払っています)ので、皆さんも実際に病院に行かれた気持ちで読んでいただければと思います。
それでは、「山川先生の診察室」後編をどうぞ!
※今回は「後編」です。「前編」はこちら。
■三重県伊勢市「いせ山川クリニック」診察室
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▼ 山川 伸隆 (やまかわのぶたか)
脳神経外科医。三重県伊勢市出身。三重大学医学部附属病院、桑名市民病院勤務後、大津市民病院脳・神経外科副医長、市立伊勢総合病院脳神経外科医長を経て、平成19年に伊勢市小木町にて「いせ山川クリニック」を開業。脳卒中、頭痛、認知症サポートなど幅広い治療・指導を行なっている。自身で企画する伊勢地区「脳卒中・認知症市民公開講座」は、毎回数百人を動員する人気講座となっている。
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※前回の続きです。
山川先生:横から撮ったレントゲンのこの顎のところ。分かります?
弘中:2本写ってますね。
山川先生:そうです。顎の2本のラインは普通ならそれなりに重なるはずが、2本に見えるというのは、顔がゆがんでいる人以外であれば、小首を右側に傾げている可能性があるんですね。そして、首を前後に曲げた写真がこれですね。(2枚のレントゲン写真を交互にパカパカ表示する)
山川先生:首のほうは、骨と骨の間のいわゆる椎間板のスペースは比較的きれいなんですが、ここですよね。5番と6番のところの問題。まずここが怪しげなんだろうなと思います。
弘中:骨と骨が当たってきてるんですね。
山川先生:そうですね。これで「ヘルニアですよ」と診断する人もたまにいるんですけど、これは絶対に分からない。写ってないですもんね。
弘中:それはレントゲンでは写らないものなんですね。
山川先生:骨と骨の間のクッションは、硬い皮のまんじゅうの中に柔らかいジェルのようなあんこが入っている感じ。その皮がビリビリと破れて中からあんこが出てしまう、それがヘルニアです 。でもヘルニアはレントゲンでは写らないので、MRIとかで見るんです。
弘中:さっきレントゲン室にあった、寝る機械ですね。
山川先生:あぁ〜ごめんなさいね。あれはCTなんです。MRIは総合病院に依頼して撮影してもらってます。
弘中:CTとMRIは別なんですね。この首がおかしいと、腕に痛みが来るんですか。
山川先生:腕への神経は首の頚髄から主に5本伸びてくるんですが、1本が単独で伸びているわけではなくて、枝分かれしたり他の神経と関わっていたりするんです。弘中さんはおそらく、本線だけでは無くて、そこから分かれているマイナーな神経にも症状が出てきているんだと思います。
弘中:枝分かれしている神経ですね。だから脇の下が痛かったりするんでしょうか。
山川先生:そういうことです。薬はセレコックスという痛み止めと、症状がきつかったためにリリカも出されていたと思うんですけど、薬としては善い選択だと思います。症状が急で辛い時にはステロイドを使ったかもしれませんが、今は薬が効いてきて、よくなってきていると思いますよ。
弘中:首に症状があるということは、例えば、普段使っている枕の高さとか硬さとかって、何か関係ありますか?
山川先生:よくご存知ですね! 枕の高さや寝相と首の症状には大いに関係がありますよ。どういう枕を使ってます?
弘中:真ん中が凹んでいる、低めの枕です。
山川先生:以前、低反発枕がやたら流行りましたけど、寝ている時に首の動きや寝返りの邪魔をするものは、あまり良くないと言われています。
弘中:後頭部が凹みにはまるから、寝返りの邪魔してるかもしれないです。枕の高さで首が曲がってしまうとかは関係ありますか。
山川先生:枕をして寝ている姿が、極端に前屈していたり後曲していたりしないことも大切です。煎餅座布団を二つ折りにしたぐらいがちょうどいい!っていう先生もみえますね(笑)。専門家に相談しながら枕を作ってもらって、実際に自分に合うかどうかをお試しレンタルできる店も伊勢にはあるんです。東京にも探せばお近くにあるんじゃないですか?
弘中:そう聞くと、理想の枕を探したくなってきました。今のところ、僕の症状は薬やリハビリで快復に向かってると思っていいんでしょうか?
山川先生:今はこのまま経過を見ていただいて握力が戻ればいいんですけど、あと使うとしたら、筋弛緩剤なんかをプラスしていただいて、本来の柔らかかった筋肉に戻していく。症状がつらい場合はステロイドと筋弛緩剤を効果的に使うと治りは早くなると思います。リンラキサー、ミオナール、アロフトなどを追加していただけると、症状緩和に一役買えると思います。
弘中:筋弛緩剤ですね。普段は肩こりとか滅多に感じなかったんですが、今は痺れが出てから、すごく右側に肩こりを感じるようになりました。こうやって肩こりなどが急激に起こるものなんですか。
山川先生:よく患者さんにもこういうグラフ書くんですけど(手元の紙に説明グラフを描く)、横軸が時間の経過、縦軸が痛みの強さです。
弘中:上に行くほど痛い、っていう図ですね。
山川先生:そうです。そしてこんな感じで、ここを超えると症状が出る、というラインがあるとしますね。(黒い点線を引く。以下の線や字は山川先生の直筆です)。
弘中:この点線より上に行くと「痛い!」って感じて、この点線より下だと痛いとは感じない、と。
山川先生:ええ。弘中さんのように、今まで肩こりなんて無くて快適だったのが突然肩がこって痺れたという人は、今まではこんな感じで何もなかったけど(青い線を引き始める )、それが突然急に何かのきっかけでピョーンとラインを超えて痛みを感じて、それで治療や薬でこう元に戻したいと考えますよね。
弘中:そうですね、今は「痛みを感じるレベル」を超えてかなり痛いので、また底のほうまで戻ったら嬉しいです。
山川先生:でも本当は、何も問題がなかったんじゃなくて、症状としてはラインの下ぎりぎりぐらいまでずっとあって(赤い線を引き始める)、何かのきっかけでこうしてポンとラインを超えた、というケースがほとんどなんです。
弘中:症状が急に出てきたんじゃないくて、症状は痛くないだけでずっと痛むスレスレだったということですね。
山川先生:そう。だから、寝相が悪かったとか子どもを抱きかかえたとか料理を手伝ったとか、小さなきっかけで症状が出てきた場合は「どうしてこんな小さなきっかけで?」と思いがちですが、実はずっと潜水艦のように水面ギリギリに隠れていて、けっこう危ない状態で続いてきたんですよっていう。
弘中:ずっと気づかなかったけれど危機寸前だったと。
山川先生:そうなんです。それで薬やリハビリで症状が治ったと思っても、こうしてまだ水面下にちょっと潜ったというだけだから、油断せずにメンテは絶対忘れたらダメだよ、とよく説明するんです。
弘中:治ったんじゃなくて、ただ症状がこのラインよりも少し下回ったというだけで、症状はまだあるということですね。
山川先生 :そのとおりです。
弘中:先ほどお伝えしたように、今はリハビリで首の温めと牽引をやっているんですが、これって結局何を目的としているんでしょう? 首の骨と骨を離すため? 骨と骨の間のクッションを増やすため? よく理解してないままやっちゃってます。
山川先生:弘中さんの場合、ヘルニアになっているのか? ヘルニアになりそうなところで止まっているのか? 要するにあんこが飛び出しているのか、あんこが今にも飛び出すぐらいに膨らんでいるのか、まだ分かんないわけです。
弘中:あ、まだMRIやってないからですね。
山川先生:そうですね。それで、牽引することで、圧迫を受けている神経とその周囲の影響を緩和すること、さらに周囲の筋肉の緊張をほぐすのが目的です。うまくいくとヘルニアが凹んじゃうこともあるんですよ。
弘中:まだヘルニアかどうかは分からないから、まだいつまでやるかも分からないですよね。
山川先生:牽引は一時的なもので、経過を見ながら重さや時間の調整が必要ですし、リハビリの追加も必要な時もありますから。ただ時々、いわゆる漫然と引っ張っているだけっていうところもありますから、それは考えものですけど。
弘中:右肩や右腕の筋力が落ちてるということだったので、筋トレとかやったほうがいいんでしょうか。リハビリ中だから運動は患部に負担がかかっちゃうのでやめたほうがいいとか。
山川先生:いや、症状が悪くならなければ、気分転換も含めて、運動はぜひやってください。
弘中:あ、運動はしていいんですね。
山川先生:特に気をつけたいのは、運動後のケアです。運動のやりっぱなしが一番マズいです。イチローさんの話をよくするんですが、試合前に十分なアップをして、試合後はプライベートトレーナーに十分体をほぐしてもらう。だから、イチローさんは連戦でも戦える体が準備できます。傷んでいる体をいたわりながら運動をするのであれば、運動そのものより運動前後のケアに注意したほうがいいですよ。
弘中:今も右肩とかが痛いぐらいに凝る日もあるし、運動を始めたら筋肉痛とかもあるかもしれませんが、リハビリ中でも例えば整体院とかマッサージ店を利用してもいいんでしょうか?
山川先生:もちろんです。でも信頼できるところで受けてくださいね。ろくにどんな症状かの話も聞かず、チョイチョイと触っただけでいきなり背術を始めたり、首をガッコーンとしゃくったり、バキバキバキ!っていきなりひねるようなところ、ありますよね。
弘中:けっこう多いです。
山川先生:そういうところはやめましょう。 そんなデモンストレーションで、取り返しのつかないことになっては元も子もないですから。外から触って分かる情報には限りがあるんです。だから熱心な治療院は「どこか病院で、レントゲン撮った? よかったら写真見せてくれないかな?」って聞いてくれますよ。そして患者さんの希望をできるだけ聞いてくれようとしますから。そういうところでやってみてください。
弘中:はい、分かりました!
山川先生:それでは最後に、自分でできる体操の仕方を紹介しておきますね。筋肉が凝り固まっている時って、ただ単純なストレッチをやっても、中に硬い筋肉の塊があってその表面だけが伸びているだけになりがちです。だから、この真ん中の硬い筋肉を伸ばすようにする治療体操をやることで、けっこう楽になるんです。それをやってみて下さい。その体操は後ほどスタッフのほうから説明させます。これで今回はおしまいになります。
弘中:ありがとうございます。
山川先生:お大事になさって下さい。
-診察終了。弘中、診察室を出る。
■「いせ山川クリニック」別室
-弘中、クリニックスタッフから「肩こり体操」の説明を受ける。首や肩の体操など。ゆっくり丁寧に行なうことを学ぶ。終了後、受診料の支払いのため受付へ。
■その後
-弘中、東京で通院中の病院の診察にて筋弛緩剤を要望。メコバラミン錠500「トーワ」、リリカカプセルに加え、ロキソプロフェンナトリウム錠60mg「クニヒロ」、クロルフェネシンカルバミン酸250mg「サワイ」、レバミピド錠100mg「EMEC」が処方。現在もリハビリ通院中だが、痺れは次第に軽減されている模様。
というわけで、三重県伊勢市の「いせ山川クリニック」まで行って山川伸隆先生の診察を受けてきました。
後ほど「予防論」全5回を読み返してみて、「読んでいたのにきちんと意識していなかった」箇所がたくさんあって、その怠慢が今回のような症状を生んだのだなと反省しきりです。
今回の診察ライブの「番外編」の中にも、皆さんにとって役立つ情報がいろいろと見つかったのではないでしょうか。
ご商売もお仕事も、何より健康が第一です。
皆さんもぜひ健康に過ごされますよう、日々の予防や検診はきちんと意識しておきたいものですね!
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この記事はここまでです。購読料は250円となっていますが、これはこれまでご覧下さった方に委ねる「投げ銭」ですので、無視して頂いて構いません。もし「自分も診察料のつもりで、投げ銭したい!」という優しい方はぜひ。
※250円の「投げ銭」をされた方のために、ここから下は弘中勝が受診のために伊勢に行った時に現地で撮った風景写真をいくつかブログ的に。でも大したものではないので期待しないでご覧下さいませ。ご興味ある方は、よろしければ『脳神経外科医・山川伸隆の「予防論」』のnoteマガジンを購読されることをお勧めします。全部閲覧できます。
※こういう風景写真がいくつか続いていくだけです。