女王様のご生還 VOL.90 中村うさぎ

先週は私のパソコンがぶっ壊れて原稿書くのもメールの送受信もできなくなり、メルマガお休みしちゃってすみませんでした。



新しいパソコンを買って業者さん呼んでセットアップしてもらったのはいいんだけど、「ドキュメントに入ってるファイルは全部移しといてください」ってお願いしたのに、ほんの一部しか残っておらず、前回の原稿のデータも失われてしまって、読み返すこともできません。

確か母の上京の話を書いてたと思うんだけど、どこまで書いたか忘れてしまった。



新しいパソコンにもなかなか慣れない。

基本は同じはずなんだけど、原稿の文字組設定とかその他いろいろ、今まで普通にやれてたことが一切できなくて、ほぼお手上げ状態。

それでも原稿の催促は来るし、もう完全にテンパっております。



相変わらず左手は人差し指しか使えないしね。

原稿を書く時間がかかり過ぎて、もう物書きは無理なのかもしれないと思い始めた。

だからって他にできる仕事もない。

足が不自由だからコンビニやファーストフードでも働けないし、第一、通勤ができない。

働いてる間じゅう、夫に支えてもらうわけにもいかんでしょ(笑)。



私には何もできないんだなぁと思ったら、本当に「生産性のない人間」とは自分のことだと痛感した。

とっくに閉経してるから子どもも生産できないし、労働という意味での生産性も皆無。

あの女性議員に言わせれば、税金なんかビタ一文使う価値のない人間だよ。

あんなに所得税やら住民税(←言っとくけどちゃんと払いましたよ)やらタバコ税やら払ってきたのに、年取って子作りもできず身体も不自由になった途端に税金使う価値のない人間と認定されるとは、あまりにも皮肉で笑うしかない。

私の払った税金は何に使われたのかなぁ?

でもまぁ、それが社会ってもんなんだと思う。

社会が公平だと思ったら大きな大間違いだよ。



そんなわけで、前回まで何を書いたか確認できないので、うろ覚えのまま書かせていただく。

母が私を「夫の愛人」だと思い込み、ホテルの部屋から出て行けと叫んだ件は書いたと思う。



で。その翌日。

両親とランチの約束をしていた私がホテルまで迎えに行くと、ひどく上機嫌の母親がそこにいて、なんだかウキウキしているのである(苦笑)。

しかしまぁ、不機嫌にされるよりはずっとありがたいので、私も調子も合わせて談笑し、父親に「お母さん、機嫌治ったね。よかったね」と言うと、父親は顔をしかめて曰く、

「今はな。でも今朝起きた時は大変だったぞ」

「え、なんで?」

「目を覚ましたら見慣れない部屋にいるもんで、ここはどこだろうと考えたらしい。で、いきなり俺に、『あなた、こんな家、いつ買ったの?』って訊くから『家なんか買ってないよ。ここはホテルだよ』って説明したら、『またそんな嘘ついてごまかして! 私知ってるのよ! ここは、あなたがあの女と会うためにこっそり買ったマンションでしょ!』って……」

「マジか!」



一晩寝たら忘れてるかと思いきや、いまだ母の「夫に愛人がいる」妄想は健在らしい。

5分前のことも忘れるくせに、たいした執着だ。

これはもう、昨日今日の妄想ではなかろう。

母がこの何十年間、言葉にはしなかったものの、ずっと心の奥に抱いていた疑念なのだ、きっと。

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