女王様のご生還 VOL.191 中村うさぎ

私は自他ともに認める依存症だが、どういうわけかギャンブルとアルコールにはハマらない。

まぁ、アルコールは体質の問題があるからわかるとしても、多くの人がハマるギャンブルに一切関心がないのはどうしてだろう?



競輪、競馬、パチンコなどはひととおりやった事があるが、まぐれで当たってもたいして興奮しないし、「またやりたい!」という気持ちに全然ならなかった。

そういえば宝くじやロト6の類も買わないし、株もFXもやらない。

買い物や恋愛など金のかかる行為ばかりに耽溺して、金が儲かるかもしれない賭けには見向きもしないのだ。

べつに金が欲しくないわけではないんだが(もちろん欲しいさ!)、金は稼ぐものであって儲けるものではない、という感覚がある。

自分の作品が売れて金になるのは自分の評価に繋がるけど、宝くじやギャンブルや株で儲けた金は私という人間の評価とは関係ないでしょ?

だから、そんな金に価値を見出せないのね。



ギャンブルなどにハマる人の場合、「射幸心」という脳の報酬システムが原因だとよく言われる。

これは「まぐれ当たりを期待する心理」なんだそうで、ネットゲームで問題になったガチャなどもこの「射幸心」のおかげで成り立っているらしい。

私に言わせれば、ギャンブルや宝くじだけでなく株やFXにハマる人もやはり「射幸心」をくすぐられているように見える。

「まぐれなんかに期待してない。ちゃんと自分で考えて投資してる」と反論されそうだし、実際に手堅い株にしか手を出さない人もいるだろうが、ハイリスクハイリターンの投資を好む人はやはりギャンブル気質なんだろう。

大損しても手を引かず、ロスした分を取り戻すべく躍起になるところも「射幸心」の特徴らしいから、やっぱり投資もギャンブルなのだ。



ところでこの「射幸心」だが、「当たる確率が低ければ低いほど当たった時の快感が大きく、ますますハマりやすくなる」というシステムだそうで、ガチャや宝くじや福引きなどはこの典型である。

たぶんパチンコも、この「当たりそうで当たらない確率」をうまい具合に調整してるんだろう。

私はたぶんこの「射幸心」が希薄みたいで、パチンコなんかもすぐ諦めてしまうし、勝っても負けても熱くなれない。

この「たまに当たるから喜びが大きい」という脳の報酬システムは何も人間に限ったものではなく、たとえば犬の訓練でも「芸をしても必ずおやつが貰えるわけではなく、時々貰えなかったり貰えたりする」方式の方が、学習能力が高まるんだそうだ。

へぇ~、不思議だなぁ。

私が犬なら、せっかく芸をしてもおやつが貰えなければやる気失せちゃいそうだけどなぁ。



そういえば、動物の脳の実験をしている先生からこんな話を聞いたことがある。

「たとえばレバーを押すと餌が出てくるような機械を置くとします。学習能力のある動物は、餌欲しさにレバーを押すようになります。で、彼らが充分に学習したところを見計らって、今度はレバーを押しても餌が出なくなるようにするんです。すると、ネズミは餌が出なくなっても懸命にレバーを押し続ける。一方、猫は数回やって餌が出ないとすぐにレバーを押さなくなるんですよ」

これは面白い。

ネズミはレバーを押す行為で脳の報酬系が働くが、猫はその報酬系があまり働かないか、あるいはすぐに解除されてしまうらしい。

つまり、ネズミの方が「射幸心」が高く、猫は低いと言えそうだ。

そういえば猫に芸を仕込むのって難しいもんな。

もしかすると私の脳は猫寄りなのか?



芸を覚える動物の方が賢いと仮定すると、明らかに「射幸心」の強い動物の方が学習能力が高く賢いという事になる。

つまり、ギャンブルやガチャにハマりやすい人ほど学習能力が高くて賢い、という事になるのだろう。

私は射幸心が希薄な分、学習能力に劣り、芸を仕込んでも覚えが悪いタイプなのかもしれない。

そういえば、幼い頃の私がお遊戯とか覚えるのが苦手だったのは、そのせいか?

子供の場合、報酬は親や先生から褒められる事なんだろうけど、昔から私は褒められてもあまり喜ばないガキだった。

私には明らかに音楽の才能がなかったのに親バカの母は私にオルガンを習わせ、私が家で練習していると「すごいわ! 才能があるんじゃない!?」などと褒めちぎったものだが、「何言ってんだよ」と心の中で思っていた。

そしてオルガン教室を卒業する際、先生から「この後はみんなピアノかエレクトーンかを習うんだけどどっちがいい?」と尋ねられて「どっちも嫌」と即答した。

周りがいくら乗せようとしても、やりたくない事は断固やらない。

そういう意味では確かに猫に似ている。

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