女王様のご生還 VOL.246 中村うさぎ

先週のことである。

ベッドの中でエロ漫画を読んでいた私はついムラムラして、久々にオナニーをする気になった。

んで、さっそく始めたわけだが、イキそうになったその瞬間!

脳天に雷でも落ちたような衝撃とともに、いきなり頭が爆発しそうな激痛に襲われたのだった。

その痛みときたら何と表現していいのやら、とにかく脳ミソが膨れ上がって今にも頭蓋骨を割って飛び出すんじゃないかと思うほどの圧と、全ニューロンが真っ赤に点滅して一斉にけたたましくアラームを鳴らしてるような、まさに緊急事態以外の何物でもない激しい疼痛で、私はオムツに片手を突っ込んだまま悶絶する羽目になったのである。



こ、これは……!

もしかして脳梗塞とか脳溢血とか、何か知らんけど脳の血管が切れて大惨事なのではないか!?

私はこのまま死ぬのか!?

まぁ、死ぬのはべつに構わない。

どうせそのうち死ぬと思ってたしね。

ていうか、死ぬなら死ぬでさっさと死なせてくれ!

死でも昏睡でも何でもいいから、とりあえずこの耐え難い痛みから解放してぇー!

あ、でも待って!

このまま死んだら、私、オムツに手を突っ込んでオナニーしてる状態で死体になってしまう!

それだけは何としても避けたい!

と、とりあえず、オムツの中の手を出すのよ!

ああ、でもあまりにも激しい頭痛で身体が動かない!



いつ死んでもいいとは思っていたが、まさかオナニーの最中に死ぬとは予想してなかった。

乳も垂れ腹もぶよぶよに膨らんだ64歳の醜い老婆が、オナニーでイッた瞬間に脳の血管が切れて死ぬなんて、これ以上恥ずかしい死に方があるだろうか?

尊厳もクソもねーよ!

おそらく第一発見者は夫だろうが、彼もさすがに呆れて絶句するに違いない。

それでも死んだ直後に発見してくれたらそっと私の手をオムツから引き抜いてくれるくらいの配慮はしてくれそうだけど、今は真夜中で彼は熟睡中であるから、発見は朝になるかもしれない。

そうなると死後硬直が始まって、彼がどんなに引っ張っても私の手は陰部を鷲?みにしたまま放さないかもしれないのだ!

そしたら私は、オムツに手を入れたまま、いろんな人の目に晒されるわけで……うわあああああーーーっ!!!!!



想像しただけでムンクの叫び状態になった私は、激痛に耐えながら息も絶え絶えにオムツから手を引き抜き、それから心おきなく痛みに七転八倒したのであった。

そうこうするうちにピークが去ったようで、容赦なく打ち寄せる激痛の大波は徐々に鎮まっていき、数分後にはさざ波程度になっていた。

そうか、死ななかったか。

いやあ、本気で死ぬ覚悟をしちゃったぜ。

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