女王様のご生還 VOL.13 中村うさぎ

いよいよお金が無くなって大変なことになってきている。



昔、ラノベ雑誌に「中村うさぎのビンボー日記」というエッセイを書いていた私だが、あの当時は買い物依存症でシャネルやエルメスを買い過ぎた結果、水道代も払えなくて止められるという自業自得の貧乏生活だった。

が、今は同じ自業自得でも、「世間から見捨てられて仕事がない」という貧乏だ。

まぁ、使い過ぎて貧乏より、収入のない貧乏の方が、ある意味、「正しい貧乏」なのかもしれない。

「貧乏」に「正しさ」というものがあるのかどうかは知らないが。



それでも「ああ、どうしよう。お金がない」とかドキドキしながらも、あんまり危機感がないというか、どこかで「ま、どうにかなるか」と考えているところが、私の恐ろしい脳天気さである。

いままでずっと、この「どうにかなるか」で生きてきた。

そんでもって、どうにかなってきた。

まぁ、たまたま運が良かったんだと思うが、おかげですっかり人生をナメてしまって、ことお金に関しては危機感が異様に薄い。

世の中にはお金がなくて首をくくる人もいるというのに、私はたぶんそこでは首をくくらないだろう。

首をくくるとしたら、別の件で絶望した時だ。



病気のせいで歩けなくなり、仕事も金もなくなって、おそらく現在は私の人生で最悪の時期だと思う。

まぁ、これからもっと悪くなるのかもしれないが、現時点では自分史上最悪だ。

なのに私は、なんとなく幸せなのである。

そりゃ落ち込んだり苛立ったり自己嫌悪でどよーんとしたりはするけど、少なくとも自分を不幸だとは思ってない。

いろいろあったけど、ま、こんなもんか、という感覚だ。

そして、このまま終わったとしても、自分の人生は幸せだったと思えるような気がするのだ。

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