新卒就活で、転職で、企画職に就く方法

商品企画や事業企画、「企画」という名のついた職務は昔から人気があります。日ごろ指導する新卒大学生でも、とりわけ文系学部生からどうすれば企画職に就けるかという相談をたくさん受けます。新卒でも転職でも企画職に就くにはどうすれば良いでしょう?

・企画職とはどんな仕事か知っていますか?

「営業だけは嫌」

「営業でソルジャーになるなんて負け組決定」

「お客様を笑顔にできる企画を作りたい」

キャリア面談では、いろいろな理由で企画職を希望する学生と対面します。理系大学院生の研究職と並んで、文系学部生の人気職種と呼べるでしょう。

では実際に企画職とはどんな仕事なのでしょう?これを明確に理解して志望している学生は非常に少ないと思います。また既に社会人としてキャリアを持っている人でも、企画職に転職したいという人も少なくありません。しかし社会人であってもやはり企画職の業務内容についてはあまり明確でない人の方が多いといえます。なぜでしょう。

・企画職が何をする仕事なのか理解されていない理由

それは企画職の業務内容が定まっていないからです。

身もフタもないですが、営業職ならば営業活動を中心とする職務であり、営業上の成果を求められる職務として明確です。生産・製造職、研究職あたりもイメージと実務に齟齬が少ない職務といえるでしょう。

なぜ企画の仕事は定まっていないかといえば、まず第一に会社によって「企画職」の位置づけや職務分掌が違うことがあげられます。法律などで明確に規定する職務ではなく、それぞれの会社が自由に企画職の職務内容を決めることができます。第二に、営業や生産と比べて圧倒的に従事する人数が少ないため、一般論としての共通認識が乏しいこともあげられるでしょう。

「業界・企業によりさまざま」といっておいて、統一した定義付けをするのは矛盾しますが、広い意味で企画職に求められる役割をいうなら「価値を生み出す仕事」というとらえ方はどうでしょう。利益ではなく、価値というのがミソで、企画によっては全く利益を生まないものは珍しくありません。結果として失敗して利益を生まなかったのではなく、計画段階から利益を出すことを目指さない企画もあるということです。

・企画職で求められる能力

ではそんな企画は何のためにあるのか?価値を生み出したり、増幅させるためといえます。広告宣伝活動では、サンプリングという無料で商品を配るSP(セールスプロモーション)があります。費用をかけてサンプリングパックを作ってタダであげるのですから、少なくとも利益的にはマイナスになります。しかしこれまで購買経験のなかったユーザーに、製品を「お試し」してもらうことで良さを実感してもらえれば価値の発見につながり、その後購買してくれれば新たなユーザー発掘となり、その製品の価値は高まることでしょう。

もちろん営業企画で利益増大を目的としたものもあれば、金融系の企画はそもそも利益以外ゴールがない場合もあるでしょう。大切な部分はここで、「何が求められるのか」を一般論ではなく、自分で理解し、見つけ出し、そのゴール設定も含めて、限りなく自己完結できる力が必要ということです。

新卒で企画職に就くことは、現実的に限りなく難しいでしょう。なぜなら新卒では仕事そのものを自己完結できるだけの知識と能力が無いからです。当然ですが仕事を教わって、自ら回せるだけの習熟ができずに企画を立てることは普通は無理だと思います。

・企画職への近道

私自身は新卒時に名もない零細企業に入ったことで、そもそも職務分掌などなく、なんとなくいつの間にか企画「的」な仕事をやるようになり、30過ぎても役職もないヒラ社員でしたので、なんとなく「企画担当」を名乗れるようになることができました。

広告出稿のマネごとのような仕事やパンフレット作りの際に自分でコピーを書くようになり、ヒラでも経験とともに事業計画や提案書も自ら書くようになりました。最大の弱点は会社が小さすぎて営業部門がなく(事務局のような仕事)、営業実践の経験を積めなかったことです。

後にマーケティング専門職として転職した以後は、新製品企画、販売企画、事業企画、さらには新部門や新規ビジネス企画も提案する立場になりました。こうした経験から、また自分が管理者として人材採用をするようになり、どんな人間を企画担当に充てるかが見えてきました。

何より大事な能力は発想力であり、白紙にゼロベースで絵が描ける能力は必須です。ある大手広告代理店の新卒ESではA4白紙を与えて何でも良いからアピールをしろというものがかつてありました。そのESを持ってきて「何を書けばよいか」相談するような学生は、どれだけ偏差値トップクラスの学生でも、可能性はゼロだと思いました。逆に偏差値的にはそこそこでも、次から次へとアイデアが湧いてくるというような相談だったら、おそらくいかようにも支援できたと思います。

発想力はある意味持って生まれたものだったり、自己研鑽で身に着けるもの。しかし行動力はどうでしょう。企画職で求められる能力を得る最も近道は営業職だと思います。営業現場で顧客の考え方や流通の知識を得、さらにはロジスティクスまで理解できれば、かなりの実践的企画が生み出せる気がします。残念ながら、いずれも大学の勉強で身に着けられるものではなく実戦経験を通じて経験と能力を養っていくしかないと思います。

新卒学生が嫌がる「営業」こそ、企画職に就く最も近い道だと私は思います。他社はともかく、その会社の企画業務に必要な知識と能力養成は、確実に営業職を通じて身に着けられるでしょう。その上で企画をやりたいという意欲を持ち、それを経営に訴え、説得できるプレゼンテーション能力があれば、現実的に企画職に就くことは十分可能だといえます。

ここから「投げ銭有料コーナー」

なぜ大学生の「サークルで企画業務を担当し大成功させました」というアピールや転職時に「営業時代の企画経験」アピールは空振りするのか

大学生のES指導で広告代理店や日用品メーカーの商品企画などを希望する学生は少なくなく、そんなESでよく見かけるのが「サークルで企画業務を担当し大成功させました」というアピールです。社会人が転職する際に、営業や販売職を通じて行った企画経験のアピールも、残念ながら、ほとんどの場合は評価されないことが多いと思います。なぜでしょう。

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました