内定先企業の選び方  ~真の「社風」で判断する

連休前の4月末から連休明け、実は内々定がどんどん出始めています。

うれしいことに複数内定を得た学生は、どうやって内定先を絞り入社する会社を選べば良いでしょうか。

学生のキャリア相談・キャリア支援担当を15年やってきた実績でお答えします。

1.23卒内定状況

リクルート就職みらい研究所によれば、現学部4年/修士2年生の内定率は4月が38.1%。5月になり58.4%とのことです。

4月から5月にかけ一気に20%も内定率は上昇しました。この間に内定(内々定)を得た学生が多いというのは、日々直接学生指導をしている私の実感と一致します。

しかし当然ですが就活はまだ続いている人もいます。周囲で内定者が出ると焦るのも人情ですが、ここはあせっても何も良いことは起きません。特に「戦略的就活」を実践できていた人は、粛々とやるべきことを進めて下さい。

では過半数に内定が出たというこの内定率。ここから先に何が起こるでしょうか?

2.6/1の意味

私の著書「理系のためのキャリアデザイン 戦略的就活術」(アマゾンでは売切れ)読者の方や講座を受けた方にはしつこいほどスケジュールが大事であることを述べてきました。特に3/1と6/1は就活学生にとって特別な日です。

コロナが起こる前まで、いわゆる上位校と呼ばれる大学の学生は6/1に一斉に内定を得るというのがニュースにもなっていました。文科省ルールで「3/1は就活広報解禁」、「6/1就活採用解禁」とされています。

この意味するところは、3/1広報解禁=堂々と採用情報を告知出来る=エントリー出来る=直接学生に説明したり、ダイレクトコミュニケーションが取れる=実際に会う≒その時点で選考・評価もできてしまう・・・という、実質的な就活スタートです。実際には超早期化が進み、3月どころか1月、ひどい企業は前年秋から採用選考をしているところもあります。

一方6/1とは選考解禁=その日に選考すればいつでも内定(内々定)出せるという解釈から、上位校や優秀と思われた学生に対しては一斉に内定(内々定)を出すことが多かったのです。ただしこれはコロナ前までのことです。

コロナによって選考スケジュールが変ったり、企業としては一流・超一流でも知名度の乏しいB2B企業などは学生集めに苦労するため、必ずしも6/1だけで完結することはありません。現在も選考は続いているでしょうし、この先応募する学生もいます。

3.会社選び

内々定は就活のゴール。逆に言えば内々定まで至らなければ、どれだけ選考過程で上手くやれても、企業の方から褒められても、内定という法的な証拠をもらわない限り「選択肢」にならないのです。内定を得てしまえば断るのがたいへん。断ると怒られるということを極端に恐がる学生が増えています。

結果としてまだ内定も出ていないのに志望先を絞り込んでしまい、結局絞り込んだものの内定が得られず持ち駒ゼロという最悪の事態に陥ってしまう学生もいます。自分で自分の首を絞めるだけの企業選びとなってしまっているのです。

偏差値の高い上位校だけでなく、中堅やそれ以下のランクの大学でも優秀な学生はもちろんいますし、企業はバカではないので、そうした光る玉を見つけようと血眼で選考しています。大学名と偏差値だけで採用できるなら人事など不要な訳で、逆に大学名だけすごくて中身ゼロという一番採ってはいけない学生をいかに選別するか注力しています。

しかし内定を得たと言うことは、これでやっと「選抜される側」から「選抜する側」になったということです。だから内定がゴールなのです。複数内定があっても入社できるのは1社ですから、絞り込みは欠かせません。ではどこにしましょうか?

初めから自分の中で優先順位ができていれば問題ないでしょうが、なかなかそうはいきません。特にやりたいことならA社、知名度ならB社、人事が親切なのはC社のように各社の良いところがバラバラだったり、何より今内定を得たのはA社だが、本命B社の結果はまだずっと先・・・・ということも少なくありません。

どうしましょう。

4.今こそ「社風」の出番

毎年就活シーズンには全国さまざまな大学やイベントで50回くらいの就活講演をやっています。特に合同説明会の基調講演が多いので、その際に必ず「この後の企業個別説明で質問すること」を訴えています。

おかげで私の講演の後、参加学生が積極的に質疑応答に参加したと、企業さんから感謝されることがよくあります。ただ、できれば的を射た質問で、良いイメージを持ってもらえた方が良いのは言うまでもありません。

しかし多くの学生はストレートに「答」を聞いてしまいます。

「御社の社風は何ですか?」「御社は女性(男性)が働きやすい社風ですか?」のタグイです。

言葉悪いですが、詐欺師に「あなたは詐欺師ですか」と聞く人はいません。どんな社風かは自分が確かめて、感じること。その企業に聞いてどうするのでしょう。

数年前「オワハラ」という問題が注目されました。

あなたに内定を出す代わりに今この場で他社選考を辞退しろと迫るという悪質な手法です。

私も多くの企業の採用のコンサルティングをしているので、内定者を逃したくない採用担当の気持ちはわかります。しかしここで結果を強要するのはただのハラスメントであり、本来の採用という目的から外れます。

何より自分たち企業は内定という証拠を出さずに、学生だけに内定受諾という証拠を強要するのは明らかにおかしいですし、不平等です。ビジネスの原則は相互信頼。相手は学生であって奴隷ではありません。モノではなく人間ですから、お互いフェアに企業は内定を出す、学生は責任持って受諾するという「契約」でなければならないはず。

オワハラのように一方的に企業の要求を強要する会社は、それが社風なのです。「アットホームな社風」「若手も意見を言いやすい風通しの良い社風」

こんな言葉には何の意味もありません。ただの宣伝コピーです。しかし自分たちの内定を強要するというのはこれ以上無い、社風の「証拠」ではないでしょうか。