誤解されている、「面接で求められるコミュニケーション能力」

就職でも転職でも、面接は避けて通れない最大の関門です。コミュニケーション力のトレーニングやセミナーに参加される方は学生から社会人まで数多くいますが、単に「コミュニケーション能力向上」を目指すのでは意味がありません。「面接突破」というように、コミュニケーションには必ず明確な目標を設定することが欠かせないのです。逆に面接で求められるコミュニケーションが何であるかを考えずに就職・転職に突き進むのは無謀でしかありません。

経団連「2016 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」によれば、4月入社対象の採用選考にあたって重視した点は「コミュニケーション能力」で13年連続トップです。





1. ダイエットが長続きしない理由

コミュニケーションのセミナーやトレーニング、個人相談含め無数に指導をしてきました。ただし、何となくコミュニケーションを考えている人は多く、結果としてトレーニングにより何をしたいのか明確になっていないのがほとんどです。これは何となく体を鍛えたい、何となくダイエットしたいという、漫然とした目的意識の行動が長続きしないのと同じく、まず成果にはつながりません。

神がかった役作りで、体重や体型をも変える手法をデ・ニーロ・アプローチと呼んだりします。実際にそれを行った俳優ロバート・デ・ニーロにちなんだものです。心血を注ぐ作品のために体重を何十キロも増減できるのは、もちろん誰でもできることではありません。しかし「役作り」という強烈な目的意識があれば、肉体を変えることができる俳優さんは、デ・ニーロまで行かずとも、います。知人の売れない舞台俳優は、失礼ながら端役でそこまで?と思いますがデ・ニーロ・アプローチをやっていました。

役作りや作品のためという明確で強烈な目的意識は不可能を可能にする推進力となります。ではコミュニケーションにおいてもこの力を借りてはどうでしょう。目標の明確化をして取り組むことは、その実現には大きく役立ちます。ただし当然そのための目標とは明確で、揺るがないものでなければなりません。

漫然とコミュニケーション能力を上げたいといっている限りは、漫然とダイエットしたいといっているのと変わりありません。そこから脱するために、まず具体的に目標設定をすることで、コミュニケーション能力を高めることが可能になります。





2.面接突破という目標設定

「就活で採用されたい」「転職したい」というのは明確な目標の一つです。漫然とコミュニケーション力を向上したいという人より、キャリア実現という目的を持った人の方がずっと切迫感が高く、成果にもつながります。

ただし「面接突破のため」だけでは、まだ明確化は不十分です。面接突破で必要なコミュニケーション力が何なのか、ここを明らかにする必要があります。少なくとも面接は「上手なしゃべり方」を審査するものではありません。実演販売の仕事での採用であれば、すばらしいプレゼンテーション能力は採用に直結するかも知れません。しかし一般職、営業職であっても、プレゼン能力は実務能力の一つであり、それだけで採用を決めることはありません。

就活する新卒学生などで完璧な想定問答集を作って丸暗記する人もいますが、まずもって意味のない行為です。面接のやり取りを想定すること自体はもちろん有益です。ただし実際の面接における質問や会話が、一字一句想定通りになるはずがありませんので、想定問答に頼りすぎるとトンチンカンなものになる可能性が高いのです。

よくある例では「なぜ『当社』を志望しましたか?」という質問に対し、「私が○○『業界』を志望するのは・・・」と、質問と違う、事前に用意したであろう答を伝えてしまうことです。「当社」を指定して聞いているのに、「業界」の志望理由を答えるのは、遠からずとはいえ、コミュニケーションがずれています。質問を聞いていないと判断される可能性が高いといえるでしょう。

「面接突破」を目標とするのであれば、採用社が何を求めているのかを想定し、それに対応するものを提示できるかが重要です。一般的に採用面接であれば、その勤務先でどれだけ仕事ができるかが測られることになります。「仕事によってその会社に貢献できることを訴える」となれば、かなり具体性を持つ目標になってきました。これを目標に考えていきましょう。



3.成果の再現性

新卒就活で「偏差値の高い大学で良い成績を取った」、「高度な研究成果を上げ、学会賞を受賞した」といった成果はわかりやすいアピールです。転職の場合であれば今いる企業の実績や、業界の知識・経験も大きな魅力になるでしょう。ただし、そうした実績をただアピールするだけでは、コミュニケーションとして成り立ちません。

面接は良いアピールをしたかどうかの判定ではありません。面接の目的は、「仕事によってその会社に貢献できることを訴えられるようコミュニケーションを図る」こととしました。大学で良い成績を取ったことは、会社に入っても良い成績につながるのでしょうか。学会賞の評価と、これから取り組む仕事は同じ評価でしょうか。他社での実績とこれから勤める会社は同じ環境でしょうか。

このつながりを説明して、説得(=採用)することが具体的な成果になります。具体的成果になるという判断であればアピールすべきですし、必ずしもそうした判断につながるかどうか不明であれば慎重に取り扱う必要があります。さらに説得と結びつかないものであるなら、どれだけ輝かしい実績であってもあえて触れないという選択ができます。

知識や情報は時間とともに陳腐化します。しかし能力は新たなインプットがなされれば、新たなアウトプットを呼ぶはずです。新卒学生を雇うのも、中途採用で他社の社員だった人を雇うのも、新たに雇った会社での生産性に寄与するアウトプットを期待するから採用されるのです。

「成果の再現性(=コンピテンシー)」と呼びますが、どれだけ似た業種や市場環境だとしても、会社が違えばその仕事の進め方は違うのが普通です。よくある話では大企業で数十億円規模の業務をしていた管理職が、会社全体で数十億円売上規模の中小企業に移ったところ成果が出せず、結局早々に退職してしまったというものがあります。

「数十億規模の事業」は個人が作ったものではなく、その大企業という知名度、信用、市場環境があってなし得たものです。個人の能力や努力もあったと思いますが、その会社のカンバンが役に立たない環境では、成果につながらないというのは当然あり得ることです。



4.何をやったかより重要なこと

自分自身の成果の再現性能力が、面接で訴えるべき最大のアピールです。人事ではコンピテンシーと呼んだりします。

「いくら売った」「何人動員した」「配荷を増やした」

いずれも個人の能力ではなく、会社のおかげの可能性があります。会社のおかげとは、実際にその業務を遂行したのがご自身だとしても、会社という器があってこその顧客との関係だったり、信用だったりも含めた環境を会社は提供しているという意味です。いくら業績を絶対値で伝えられても、変化率がわからなければコンピテンシー能力を計ることはできません。会社という環境に依存したものかも知れないからです。

ここに1年間・数年間・担当前後・投入予算と売上増加率・取引先数の変化といった、どう変わったかという説明があれば説得力が出てきます。自分の関与前と後、ビフォア/アフターが入ることで、説得力は初めて出てくるのです。

新たな環境においてどれだけの生産性を上げることが出来るのかを説得する交渉こそ「面接」です。単なる結果数値や情報だけのプレゼン大会の訳がありません。面接を嘘つき大会と呼ぶ学生の話を見たことがありますが、全く仕事の本質がわかっていない言葉だと思います。





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