食べ方で美食になる 料理展望12(山本益博)

「食べ方で美食になる」

たとえば、お茶を習ったというのに、家で煎茶が淹れられない人がいる。急須に茶葉をどのくらい入れたらよいのか、お湯の温度はどれくらいが適温なのか、そのお湯を入れてどれほどの時間で、湯呑みに注いだらよいのか。こんな基本的なことがまるで分らない。

以前、フランス料理の巨匠、ジョエル・ロブションがこう言った。

「紅茶を淹れるのは、じつは、とても難しい。茶葉の量を計り、お湯を入れ、そのあと、淹れすぎては何もならないが、ほどよく味と香りを抽き出すように淹れる、その頃合いを見極めるのは、料理とまったく一緒です。ですから、紅茶を美味しく淹れられる人は、料理も上手な方だと思います」。

ごはんを炊き上げるのも、紅茶を美味しく淹れるのも、これは調理技術を要する立派な料理なのである。ならば、今度はそれを美味しくいただくために、料理に敬意を払って味わわなくてはならない。しかし、その敬意が全く感じられないのだ。

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