対立に向かう? 米中のモデル

 中国は10月18日から開いた5年に一度の共産党大会で「21年までに小康(ややゆとりのある)社会を完成させ、今世紀半ばに富強民主の強国を建設する」と宣言。さらに建国100年(2049年)に向けた国家目標として、まず第一段階の35年までに「法治国家の基本的な建設」「都市と農村の格差の顕著な縮少」などを実現させる。第二段階の2050年までに「総合国力と国際的な影響力で世界をリードする国家になる」と表明した。

 習近平主席の演説は3時間半に及び不自由な身体ながら出席していた江沢民元主席は何度かあくびをしていた。習近平主席の"一強支配"の源泉となった苛烈な腐敗追及は、今後も手を緩めることなく維持するとし、提唱する政治理念「治国理政(国家統治、政策運営)」も党規約に盛込む考えを示した。さらに党の指導力がない民族復興はあり得ないとし、共産党による政治や思想の指導力を絶えず強化する一党独裁体制を今後も維持してゆくことを強調している。欧米流の民主主義や法治のあり方とは一線を画した大国を目指すというのである。

 中国は1949年の共産国家樹立以来、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤ら4人の指導者によって経済成長と軍事強化を図りアメリカと並ぶ大国化に追いつき始めてきた。習近平主席は自分の手で何としても世界一のリーダー国となる国家の基盤作りを完成させ、自らを中興の祖となる意思をはっきりと内外に示し始めたのだ。

 しかもその方法は、あくまでも中国的社会主義と中国的大国外交で実現する野心を明確化し、党指導者の中でも別格を意味する"核心"と呼ばせるように仕向けた。もしトランプを凌ぐ権威を国際社会で認められるようになれば、毛沢東に匹敵する歴史上の人物に擬せられることになろう。

 一期目の習近平主席は江沢民、胡錦濤元主席ら長老たちに遠慮していたせいか、自らの思想、政策を明解に語ることがなかった。しかし腐敗追及で有力政治家や軍幹部、地方官僚を次々と放逐し、自らの側近を重要ポストに抜擢するにつれ習近平思想が明確になり、一強支配の基盤を固めたのである。

 残る5年間で習近平の唱える"中国の夢"を実現し、大国外交で新興国の支持を取り付けられるか――グローバル世界の中で新しいモデルを作るためのアメリカとの本格的競争が始まった。

 経済では自由競争社会の中に身を投じながら、あくまでも中国的社会主義を貫く道をどのようにして実施するのか。時として自由主義社会の理念やルールと衝突しても構わないということなのだろう。その時、自らの国力と相手の出方によって対応を変えれば、本当のリーダーにはなれまい。

【財界 2017年11月14日号 第460回】

画像:Wikimedia commons(今年の共産党大会が開催された人民英雄紀念碑と人民大会堂)