「6年2学期の成績は『成功の予感』の通信簿」

“うちの子が不振なのは、もしかして親が原因なのでしょうか”

こんにちは、塾ソムリエ・教育研究家の西村則康です。

講演会などではいつもお伝えするのですが、私は「どの子にも自ら伸びるプログラムが備わっている」と考えています。

子どもたちが育っていくには、親からたっぷり愛情を注がれ、信頼されることが大切なことは言うまでもありません。人としての基礎的な倫理観や公衆道徳、社会生活に必要な知識を教えられることも必要です。

しかし子どもは、あれもこれも全てを教えられることで育つわけではありません。

むしろ、自分で学び、自分で考え、自分自身で伸びていく部分の方がはるかに大きいのです。しかも、この自ら伸びる力は、大人から教えられ与えられるものではありません。どの子も生まれながらにして持っている力です。

ですから後伸びする子を育てるには、わが子が自ら伸びるプログラムを備えていることを信頼し、温かく見守る姿勢、関わりながら待つというスタンスを保てばいいということになります。

とはいえ、中学受験を志しているご家庭では、この「見守る」「待つ」ということがなかなか難しいのも事実です。

なんといっても、中学受験に必要な勉強量がとてつもなく多い。

さらに大手塾に通う場合は、受験合格に向けての合理的なカリキュラムを得られるメリットがある一方で、さまざまなクラス帯の子が共通のテキストを使うために、不必要な問題まで与えられて過剰な学習量を求められてしまいます。

とてもじゃないですが、小学生が自分で管理できる量ではありません。やる必要がない問題を除外して、必要なものに集中するための取捨選択も、子どもの手に負えるものではないでしょう。おのずと、親の関わりが必要となり、気がつけば「やらせる勉強」に陥ってしまう家庭はとても多いのです。

そういった苦労を乗り越えながら小学6年生に至り、わずか10歳11歳の子どもたちが、受験学年のハードな一年を過ごすわけです。子どもがハードなら親もハード。中学受験を終えたお母さん、お父さんの多くが「本当に大変だった」「もう思い出したくもない」と口々に言うのも無理はありません。

特に、多くの受験生親を悩ませる時期は、6年2学期です。

夏の講習会をがんばりきって、睡眠時間を削るようにして必死に問題を解いて、親子でやりきったはずなのに・・・

夏休み明けのテストで成績が上がるどころか、むしろガクンと下がってしまう子が毎年たくさん出るのです。

 なぜこんなことになるのか。

がんばって勉強しているのに、合否判定テストの結果につながらない原因は次の4つです。

① 親の子どもへの声かけが不適切。

② 学習スケジュールに無理や無駄がある。

③ いつもあたふたと勉強している。

④ 子どもを混乱させる志望校設定。

それぞれについて、詳しく説明させていただくのはまたの機会に譲るとして、今回はこれらに共通の事柄をお話ししようと思います。

さて、ここで一つ質問です。

【子どもが自ら意欲を持って、学習に向かうことができる条件】とは、

何だと思いますか?

 いかがでしょう?

何があれば、自ら意欲を持って学習に向かうことができるのでしょうか。

私は、「成功の予感」だと考えています。

「○○をやれば△△な状況になれそうだ。」そして、「○○なら私にできそうだ。」という成功イメージです。

 このイメージが持てなくなったり、崩れたりすると、お子さんの学習に大きな影響が出てくるのです。

① 親の子どもへの声かけが不適切。なケース

励ますつもりでかけた言葉が、子どもの「成功の予感」を壊してしまう。どのご家庭でも起こりがちなことです。

「そんなことをやっていると合格出来ないわよ!」

「あなたは●●だから、▲▲すべきだ!」

これが、「成功の予感」を壊してしまう声かけなのです。

② 学習スケジュールに無理や無駄がある。ケース

学習量にも注意が必要です。肝は「ちょっとがんばったら何とかなりそう。」と、子どもが「成功の予感」を持てる質・量であることが大切です。

「いつまでたっても終わりそうにない。」、「こんな難問、僕には無理。」と思わせてしまっていませんか?

③ いつもあたふたと勉強している。ケース

これを読まれている親御さんの多くは、すでに何曜日には「何を」やらせるという予定をしっかり組んで、子どもの学習管理をされていることでしょう。

ここで、盲点になるのは、「どのように」勉強させるのかという視点です。「何を」にだけ注目していると、「短時間にたくさんの処理を行うことだけ」を目的にした学習に陥りがちです。

 ・計算ミスや読み取りミスが多い。

 ・問題文が長くなると解けない。

 ・テストでは間違ったのに、家でじっくりやらせてみると正解が出せる。

これが、短時間にたくさんの処理を行う学習だけを続けた弊害です。

「どのように問題文を読むのか」、「どのように傍線や下線を引くのか」、「どのようにメモるのか」、「どのように図を描くのか」・・・・。これらに注意を払うのも大切なことです。

そして、入試直前のこの時期、難関校受験者は、特に「どのように」が大切になってきます。

難関校では、書き出したり、調べ上げたりと、試行錯誤の末、ようやく解き始められるような出題が多いのです。解法を瞬時に思い出して、素早く処理を終えることを目的にした学習だけではとうてい太刀打ちできないのです。「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤をした末に、「これでいけそうだ!」という解法の糸口(成功の予感)を見つけていく練習を重ねる必要があります。これは、「問題文の読み方に注意し」、「傍線や下線を忘れずに引いて」、「わかっていることをメモし」、「必要な図を書く」、というように、じっくりと時間をかけて取り組む学習です。

今までが「スピーディーな学習」なら、これは「スローな学習」と言えるでしょう。一週間に2~3時間を「スローな学習」に充てること。これが、難関校入試を攻略するコツです。

④ 子どもを混乱させる志望校設定。のケース

志望校選定では、例えば「女子学院第一志望」なのに日程が空いているからといって「渋渋」を併願するパターンが問題なのです。出題傾向が全く異なるので、2種類の学習が必要になってしまいます。この志望校選択は、学力や体力に余裕がある場合にだけ可能なことです。

女子学院向けの高速処理が必要な学習と、試行錯誤が必要な渋谷教育学園渋谷向けの学習を同時期にやるのは、多くの子どもにとって過剰な負担になります。子どもの負担感が増すばかりか、成功の予感が崩れてしまうかもしれません。もう一度、入試問題の傾向から併願校をチェックされることをおすすめします。

今回の記事は「6年2学期の成績は『成功の予感』の通信簿」と題しました。いかがでしょうか。お子さんに、成功の予感を上手く渡せているでしょうか。

もしも、「2学期になって成績が下がってしまった!」ということがおきているなら、まずは以上4つのポイントについて点検してみてください。

この4つの項目に限らず、お子さんが無事に志望校に合格し、希望の春を迎えるための方策や注意点については、まだまだお話ししたいことがたくさんあります。たとえば、苦手対策や過去問演習のやり方も大事ですね。

そういった話を、機会をみてさらに詳しくお伝えしていきますが、今回はここまでとさせていただきます。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

塾ソムリエ 西村則康