BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第13回『ねらわれた学園』『攻殻機動隊ARISE』

※2013年5月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【商品名】ねらわれた学園 劇場版アニメ&完全版資料集 Hybrid Disc

【惹句】何もかもがトキメキで輝いて見える青春時代。その映像美を豪華資料とともに堪能!

●ウキウキした青春の季節を体感できる映像美

 『ねらわれた学園』(眉村卓原作)は、1970年代から何度も映像化されてきたジュブナイルSFの古典である。2006年には細田守監督が同作とペアのような作品『時をかける少女』(原作:筒井康隆)を初アニメ化し、続編的な新しい物語をつむいで大ヒットした。この『ねらわれた学園』も中村亮介監督によるオリジナリティの強い、キラキラと輝くアニメ映画となった。

 鎌倉の中学に転校生が来たことで、生徒の中に「超能力(テレパシー)」をもつ者が出現し始める。やがて彼らを中心に自由だった学園は規律を強化され、管理社会化していく……。

 そんなストーリーは原典どおり。そして注目は、思春期特有の浮きたつような気持ちを代弁する輝きにあふれた映像表現だ。男女四人の気持ちが錯綜する様を、しなやかで柔らかい描線のアニメーション、光と影、温湿度や空気感を感じさせる撮影効果と背景美術の質感と、総合的に美しく描きぬいている。

 PS3用ビューワー型コンテンツ“PlayView”による約2,000ページの“完全版資料集”の収録も嬉しい。カラーで描かれた絵コンテ、総作画監督修正原画、背景美術など制作資料、プレスシートや劇場パンフレットなど基本文献に加え、インタビューやアニメガイドなど文字情報も収録。なめらかなページめくりとズーム感覚で膨大なコンテンツを瞬時に参照できる優れものだ。

 “Hybrid Disc”でない方を買った場合でも、これだけをPlayStation Storeで単独購入可能である(編注:2013年時点)。資料の隅々まで知りつくしたうえで映像を再見すると、さらに奥深い体験が胸をうつ。そんな独特の楽しみ方ができるパッケージである。

●若き攻殻機動隊メンバーがサイバー犯罪に立ち向かう

 今月の必見映画は、6月22日から公開される『攻殻機動隊ARISE』(原作:士郎正宗)。日本を代表するサイバー犯罪アニメの最新作である。公安9課の設立前まで時間軸を戻し、軍に所属していた草薙素子が持ち前の毅然とした態度で、荒削りながらも犯罪にまっすぐ立ち向かう姿を描く。

 シリーズ構成と脚本に『天地明察』などのヒットメーカー冲方丁を迎え、総監督は過去の攻殻シリーズで作画監督だった黄瀬和哉が担当。今回の監督は劇場版『NARUTO』のむらた雅彦、作画監督は西尾鉄也なので、アクション面でも見応えのある作品に仕上がっている。約1時間、全4話の新シリーズ。緊張感あふれる濃密な時間をぜひ満喫してほしい。

【2013年5月314日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)