必携アニメ大絵巻 第2回『バブルガムクライシス』

※2009年7月発売号の原稿です。

 第2回目はマニア方向に振り、1987年からリリースされた全8話のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)『バブルガムクライシス』(販売元/バンダイビジュアル)のBlu-ray Disc BOXを取りあげてみたい。

 2030年代、震災を経て風船ガムのように膨張したメガロシティTOKYOでは亜人ブーマを悪用し、特殊警察ADポリスも手に負えない難事件が続発していた。虐げられた弱者を救うため、「闇の仕置人」ナイトセイバーズが立ちあがる。だがそのハードスーツの下には4人の美女の姿があった……。

 まず嬉しいのは「80年代OVA」ならではのエッセンスが見えることだ。荒削りだが勢いがあり、時代を突破したいエネルギーが感じられる。流行し始めの「メカと美少女」にフォーカスしつつ、アメリカ製SF&アクション映画の志向性も強めた野性味が汁のようにほとばしる。サイズを小さめに設定したメカもスピード感とテンションを高め、園田健一描くプリスたちナイトセイバーがアンダーウェアになってハードスーツを着込むお色気シーンや、コードやパーツをまき散らしながら撃破されるブーマのサイバーなシズル感など、まさにTV放送では無理なOVA独特の先鋭さが満載なのだ。

 同時に本作はメカ&美少女アニメ史の結節点とも言える。前回言及した『ダンクーガ』を手がけた大張正己も本作PART6が監督デビュー。またPART8では合田浩章が監督、松原秀典が作画監督を担当しているが、『ああっ女神さまっ』の原作者・藤島康介は本作の2人の仕事に注目し、アニメ化を依頼したという。『アップルシード』『エクスマキナ』の荒牧伸志監督も本作にメカニックデザイン等で深く参加。数々のスタッフ、作品のルーツを発見できる点でも貴重な作品である。

 改めてBlu-ray化された画質をチェックすると、原版が35mmフィルムということもあり、驚異のクリアさで時代の熱気が伝わってくる。特にセル画や透過光のアナログな透明感と色彩には、ぐっと惹かれるものがある。

 この8作をベースに「ADポリスシリーズ」などスピンオフや、TVシリーズのリメイク(1998年)などが作られ、息の長い作品となった。それは国内より海外で受けた高い評価の結果でもある。事実、2008年末には『バブルガムクライシス』が2011年にアメリカで予算規模数十億円のSFアクション映画になるというニュースが流れた。改めて再評価が始まるかもしれない時期、そのオリジンに秘められた潜在パワーに接するためにも、このBlu-ray化は最適ではないだろうか。

【2009年6月29日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)