会社の成長を早めたければ、自分の夢を語りなさい。

中堅社員は、「(頭の) 中が堅い」と書きます。部下と上層部の間に挟まれて、頭が堅くなりがちになります。

中堅社員の大事な役割のひとつは、部下の思いを上層部に伝えることです。しかし、世代間ギャップもあり、思いをそのまま伝えても、伝わりづらい。よく咀そ 嚼しゃくして伝える必要があります。

でも、頭を柔らかくしておかないと、部下の話を理解できずに、咀嚼することができません。頭を柔らかくするためにいちばんいいのは、夢を持って部下に語ることです。

少し青臭い部分がないと、夢を持てないものですが、逆に夢を持つことで、頭を若々しく柔軟に保つことができます。

夢を持っていると、目先のことにとらわれずに、ちょっと先の未来を見つめることができます。夢といっても、大きなものでなくてもかまいません。

「こんなことがやってみたいんだ」「今度はこんな商品を作ってみたいんだ」と、具体的に社内外で口に出していると情報も集まってきます。

私は商品開発部にいた頃、どんなフレーバーのアイスが作りたいか、よく口に出していました。たとえば、「田舎で草を刈った時に出る青っぽい匂いのアイス」とか、「とれたてのキュウリを2つに折った時の匂いのアイス」とか、「新鮮なスイカを割った時に最初に出てくる甘い香りがするアイス」とか、具体的に話をしていました。

そうすると、香料メーカーの方は、いろいろな情報を持ってきてくれますし、部下も「いいですね」と一緒にうなずいて共感してくれました。

新卒で赤城乳業に入社した時には、ひとつ、大きな夢を持っていました。「会社を大きくする」という夢です。今の若い方々は、安定志向で、公務員や大手企業を目指す人が多いようですが、私は違っていました。「鶏口と為なるも牛後と為る勿なかれ」という中国の言葉がありますが、大きな会社に入って頑張るよりも、小さな会社に入って、微力ながら一生懸命働いて、「自分の成長とともに会社の成長を実感したい」と思っていたのです。

入社した1970年頃、赤城乳業は年商数十億円の会社でした。これを「年商500億円の規模の会社にする」という具体的な夢を持ちました。いっぺんに500億円にするのは無理ですから、最初は50億円、次は60億円と、手の届きそうな目標に区切って社員と一緒に達成していきました。当時は、ことあるごとに「500億円の会社にしたい」と夢を語っていました。そうはいっても、ときどき、「本当に達成できるのか」と不安になることがありました。バブルがはじけ、右肩上がりではなくなった頃です。

すると、上場している大手の香料メーカーの社員が、「鈴木さん、150億円を超えると世の中から信頼されて安定して伸びていきますよ。大丈夫」と教えてくれました。上場している企業であっても、150億円を目指していた時代があったのです。

その言葉が、大きなエールとなって私の中に響き、「よし、まずは150億円を目指そう」と当面の目標を定め、ぶれることなく仕事に没頭できました。たしかに150億円を達成すると、その後も自然と伸びていくのを感じました。赤城乳業は2015年に年商400億円を突破し、2016年は約450億円。大きいと思われた夢は、あともう少しで叶いそうです。

社員は会社の中で実現したい夢を持ち、中堅社員も自分の夢を持つ、そして、会社も夢を持つ。この3つがひとつにつながると、みんなが情熱を持って、楽しく仕事に取り組めるし、強い会社になると思います。夢を実現するには、口に出して、人に語ること。そうすると、社内外の周囲の人たちが協力してくれますし、応援してくれる。特に社員の中には共感してくれる人が出てきて、「一緒に頑張ろう」となるのです。