女王様のご生還 VOL.138 中村うさぎ

最近、目が醒めてからしばらくの間のボーッと仕方がハンパない。

誰でも多少は寝ぼけるものだし、起きたては頭が混乱してたり物忘れしたりするものだが、ここんとこのボケ具合がひどすぎて不安になるのだ。



こないだなんか、起きて携帯の留守電を聞こうとしたら、どうやって聞くのか思い出せなかった。

夫に聞いたら「え?1417でしょ?」と言われて「あ、そうか」と思ったが、こんな日常的な作業すら思い出せないなんて、もしかしたら認知症じゃないだろうか。

母親がアルツハイマーで、アルツハイマーは遺伝するから心配というのもあるけど、何より不安なのは数年前に入院中に心肺停止して3日間ほど脳が機能停止状態だったことだ。

このまま脳死状態かもと医者が言っていたくらいだし、結構深刻だったんだと思う。

それなら脳に後遺症があってもおかしくない。



記憶や認知に障害が出たら、私もきっと母のように夢の国の住人になるんだろう。

まあ、それはそれで構わないんだが、問題は夫に大きな負担をかけることだ。

それでなくとも身体が不自由になって介護されてる身なのに、これで脳までイカレちまったら、夫はさぞかし大変だろう。



認知症の面倒を見るのは並大抵ではない。

記憶と共に人格も崩壊してしまうから、「こんな人間じゃなかったのに……いや、もしかしたら、こっちが本来の人格なのか?」などと考える羽目になり、なんだか見たくないものを見てしまったような気分だ。



が、しかし!

そもそも「人格」とは何なのだろう?

我々に「本来の人格」なんてあるのか?

たとえば私はおそらく軽度のアスペゆえに、他の人とはちょっと違う物の見方や感じ方をしているようなのだが、これって私の「人格」なのか?

「私」という人間を考える時、アスペという障害を差し引いたうえで私の「本来の人格」とすべきなのか、それともアスペは生来的なものだし治療も不可能だからこれも含めて私の「本来の人格」と考えるべきなのか、非常に悩ましいところである。

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