BDアニメ New Frontier 第19回『機動戦士ガンダムUC episode 4 重力の井戸の底で』

※2011年12月発売号の原稿です。

【惹句】福井晴敏が紡ぐ宇宙世紀の壮大な物語。地上で展開する異色モビルスーツの乱戦を高画質で満喫!

 ベストセラー作家・福井晴敏が書き下ろした同題の大河小説をアニメ化した『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』。ファーストガンダムと歴史を共有する「宇宙世紀シリーズ」と呼ばれる壮大な年代記を、百年という時間と祖父・父・息子の三世代を描くことで総括しようという意欲的な試みだ。

 OVAと映画館のイベント上映、ネット配信と多様な媒体で楽しめるハイクオリティ映像は、全6話中4話目に到達してもなお、ますます冴えわたる。

 主人公バナージは宇宙空間から地球の砂漠地帯に降下し、反連邦組織側の工作員ジンネマンたちと、互いの対立を乗りこえて協力しなければ生き延びられない状況に陥る。そのプロセスで垣間みえる「大人の生きざま」が、前半のみどころだ。後半は連邦軍トリントン基地にジオン軍の残党が集結し、多彩なモビルスーツの群れが次々に登場する超絶バトルに興奮する。

 ガンダムには「MSV(モビルスーツ・バリエーション)」という文化がある。ザクやドムなどの機動兵器も工業製品なら、すべてが同じ量産機ではなく、特殊武装やパーツをつけたカスタム機や実験機、試作機もあるはず。そんなバリエーション機を想像し、かたちにしようという発想だ。

 本エピソードでは、プラモデル改造にもリンクするこの楽しみ方を、極限まで触発させるMSVが次から次へと登場する。待望のアニメによるアクション映像が、これでもかとばかり連続し、モビルスーツ好きにはたまらない時間が訪れるのである。しかも割とマイナーな機体が次々に出てきて、誰も見たことのない奮戦を繰り広げるのだから、鑑賞後しばらく呆然とするほどインパクトがある。

 この展開があるがゆえに、本作をBlu-rayで所有することには大きな価値がある。いったん普通の作品として鑑賞した後で、「今の機体って何だろう?」「どんな改造を施されているのかな?」「何を発射してるんだ?」などなど、コマ送りや静止画で延々とチェックを続けられるからだ。しかも自分で発見したディテールや情景を模型にフォードバックできるのは、最高の楽しみ方と言える。

 筆者は1981年の『劇場版機動戦士ガンダム』公開時のムック編集作業で、メカデザイナー大河原邦男氏が描きおろした「MSV」誕生の瞬間に立ち会っている。フィルムと現実をつなげる試みが30年でここまで発展したかと思うと、感無量である。Blu-rayの情報密度ならではの新たな娯楽スタイルを提示したガンダムファン必見の作品なのだ。

【2011年11月27日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)