女王様のご生還 VOL.80 中村うさぎ

「初恋はいつですか?」という質問をされると、ものすごく困惑する。

まず、何を以て「恋」と定義するのか、そこが明確でないと答えられないからだ。



たとえば小学生の頃、クラスに好きな男の子はいた。

だけど、それは恋だったのか?

周りがキャアキャア言ってたからなんとなくつられて好きになってた気もするし、そもそも恋につきもののどす黒い感情とも遠かったし、「セックスしてぇ!」などとも思わなかったし(セックスを知らんかったもんなw)、今思えばあんなの「恋」なんて言えない。



じゃあ、切ないくらい胸が痛くなったり、明らかに性的妄想が絡んでたりした「恋心」は、いったいいつから始まったのか?

おそらく高校生くらいかなぁ、とは思うが、じつのところ、よく覚えてない。



高校生の頃に、すごく好きになった男の子がいた。

ひとつ年下でジャニ系の美少年で、不良っぽい雰囲気も漂わせてて、服のセンスもすごく良かった。

夏休みに何度かデートしたけど、他の女の子とも会ったりしてるのがわかって、怒って別れてしまった。

「べつにいいじゃんね、浮気くらい」と今では思うけど、まだ子どもだったからとんでもない裏切りに思えたのだった。



高校の卒業式の前々日くらいに、まぁまぁ仲の良かった女友達が「じつはさ、あんたとあいつ別れたからもう言っちゃうけど、あたし、ずっとあいつのセフレだったんだ」と言った。

私とはセックスなんかしなかったので激しく驚いたが、何故か嫉妬の感情はなく、「えー! どんなんだった?」などとワクワクして訊いてしまった。

他の女の子と会ってるのを知った時はあんなに怒ったくせに、会ってるどころかセックスまでしてる相手にまったく嫉妬の感情が湧かなかったのは、「だってセックスだけの相手でしょ」と思ったからだろう。

当時の私にとって、セックスはそれほど価値が低かったのだ。

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