女王様のご生還 VOL.118 中村うさぎ

引き続き、先日のオフ会で取り上げられなかったご質問への回答です。



「半年ほど、デリヘル嬢をしていました。4年ほど前のことです。

理由は借金の返済でした。が、さまざまな無意識下の理由があったように今は思います。

ともかく、いろんな仕事をしてきましたが、あの仕事ほど記憶に深く塗り込まれ、今もさまざまにフラッシュバックが起こる仕事はありません。

私だけではないのでしょうか?

うさぎさんはどう思われますか?



ちなみに私はあの頃、ニンフォマニア、的だったかもしれません。

しかし、よく考えると、私は私とセックスしているような、つまり、お客が悦び、またお客がつくことが楽しくて仕方なかったし、淫らな自分を自身で確認したかったように思います。



父にはいつも愛人がいて、母が性的にもDVを受けている家庭で育ち、セックスに対して不潔感を抱いていました。

しかし、欲望はあった。

そのジレンマを、セックスを仕事=勤労にすることで自分を騙し、納得させていたのかもしれません。



ともかく、あの仕事をして、私の人生の風景は一変しました。

まだ混乱が続いています。



うさぎさん、私が落ち着く日はあるでしょうか?

どう考えればよいでしょうか?」



えーと、ちょっと私が混乱してしまいました(笑)。



あなたはデリヘル経験を肯定的に捉えているのか、否定的に捉えているのか、どちらですか?

当時はお客さんを喜ばせるの使命を取るのが楽しかったと書いているので、必ずしもトラウマというか思い出すのもおぞましい黒歴史というわけではなさそうですね。

なら、「あの頃は楽しかったな」では済まないのでしょうか?



家庭の事情でゼックスに不潔感を抱いてたが、自分の中の性的欲望にも気づいていた。その矛盾をデリヘルという仕事で解決しようとした……うんうん、いいことじゃありませんか。

自らの矛盾を自覚し、その解決法としてデリヘルを選択したあなたは聡明な人だと思います。

あなたは「自分を騙していた」と書いてるけど、それは自己欺瞞ではなく自己救済だと私なら解釈します。

嫌悪感を持っていたものの欲望がある場合、その折り合いをつけるのはさぞかし困難だったことでしょう。

仕事だと割り切ることですんなりセックスを自分の中に受け入れられたのなら、そして結果的にそこで「自己確認」や「承認欲求」が満たされて楽しかったのなら、あなたは見事に自分を救済したのです。

胸を張ってもいい思い出ではありませんか。

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