牛乳のメリット・デメリット

※この記事は、『バーサーカーコラム』2016年1月6日からの抜粋です。

http://www.berserker.jp/column/show/180

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「牛乳有害説」は広く知られるようになってきて、某医師の書籍に対して牛乳乳製品健康科学会議が公開質問状を出したのも記憶に新しい。その医師は質問状に対して回答できていないので困ったものだが、牛乳にデメリットがあるのは確かである。

デメリットの筆頭にくるのが、カルシウムとマグネシウムのバランスだろう。体内では2:1であるべきバランスが、牛乳の場合は10:1となっている。つまりマグネシウムの不足を引き起こしてしまうのだ。

マグネシウムが不足すると、カラダは骨を溶かしてマグネシウムを取り出そうとする。このとき、同時にカルシウムも取り出されてしまう。すると骨は弱くなるし、余計なカルシウムが四十肩や動脈硬化の原因となることも考えられる。

またガラクトースも問題だ。うまくグルコースに変換されれば良いのだが、うまくいかないとガラクトースは水晶体に溜まり、白内障の原因になる可能性がある。1970年の報告ではヨーグルトを与えられた若いラットは2~3ヶ月で白内障になっている。(※1)

もちろんこれは超大量のヨーグルトなので現実的ではないが、研究者は「100%の割合でそうなった」と言っており、もっと少ない量なら安全だとは言い切れない。

そしてカゼイン。だいたい牛乳1リットル中に2~4gが含まれるκカゼインにはアポトーシスを誘導してリンパ球の増殖を抑制したり、マクロファージの食作用や活性化を阻害したりする作用がある。(※2、※3)

またカゼイン(とグルテン)を除去することで、統合失調症や自閉症、アスペルガー症候群への治療効果があるとも言われている。(※4)またカゼイン由来のオピオイドはシステインの取り込みを阻害し、広範囲なDNAメチル化を引き起こしてエピジェネティックな変化を引き起こす。(※5)

ただし牛乳にはメリットもある。その一つがγリノレン酸だ。これはⅠ系統プロスタグランジンの材料になる。ただしこの目的ならば、ヤギ乳のほうがいいだろう。

そしてもう一つは、水素ガスの発生だ。水素水を飲んでいる人は、水素水1リットルにはせいぜい1.6mgの水素ガスしか入っていないこと、水素ガスは腸内で大量に発生し、それは一日に約89mgであることも知っておきたい。オリゴ糖などで水素ガスの発生量を増やすことが可能になるが、実は牛乳を飲むことで水素水を飲むよりもずっと大量の水素ガスを発生させることができるのである。(※6)

乳糖不耐性だと乳糖を分解できず、そこで乳糖が腸内細菌によって発行し、水素ができるようだ。



※1:

Cataracts produced in rats by yogurt.

Science. 1970 Jun 12;168(3937):1372-4.

※2:

乳汁κ-カゼインの免疫抑制作用に関する研究

Immunosuppresive action of milk k-casein and its digests

Research Project Number:08660328

※3:

Suppression of the Systemic Immune Response to Casein by Oral Administration of a Tryptic Digest of Casein

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

Vol. 57, Iss. 10, 1993

※4:

The ScanBrit randomised, controlled, single-blind study of a gluten- and casein-free dietary intervention for children with autism spectrum disorders.

Nutr Neurosci. 2010 Apr;13(2):87-100.

doi: 10.1179/147683010X12611460763922.

※5:

Food-derived opioid peptides inhibit cysteine uptake with redox and epigenetic consequences

The Journal of Nutritional Biochemistry

Volume 25, Issue 10, October 2014, Pages 1011–1018

※6:

Breath hydrogen produced by ingestion of commercial hydrogen water and milk.

Biomark Insights. 2009 Feb 9;4:27-32.