国民の合意は得られないので、個人で考えるしかない~武田邦彦集中講座 少子高齢化の危機(6)

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◆「月2万の支給でも年金は年金だ!」こんな屁理屈が罷り通るのか?

先回のお話で「たとえ、少子高齢化が起こらなくても、年金は崩壊する」ということがわかりました。よく「年金は崩壊しない」という学者もおられますが、それは「60歳から月10万円」という約束が「85歳から月2万円」になっても「年金は年金だ」という架空の話にすぎません。

私たちにとっては「最低の老後を生きるための年金が、定年のころから支給される」というのを年金と言っています。まさに、年金を導入するときに政府が「これからの人生は『揺り籠から墓場まで』生活が保障される」という錯覚があったからです。

また、これも先回までの整理ではっきりしたように今後の日本社会は少子高齢化対策」とか「保育所を整備して子供を産める環境を作る」などとはまったく関係がなく、急速に50歳以上の人が過半を占めるようになるということです。

かつて、厚生省の年金課長が述懐しているように「積み立てた年金は貰う頃には価値がなくなっている」ということですし、「その時には賦課型年金にすればよい」と言っても、負担すべき若者もいないのです。つまり、近未来の日本社会はどうみても「年金が支払われる」ということは非現実的なのです。

このことを政府も、メディアもほとんど報道しないでしょう。年金は「赤字になった」という理由で徐々に支給年齢と支給額が減り、さらに現在すでに行われている「介護保険料」などがいつのまにか導入されると考えられます。もともと高齢になれば「介護」が必要な人が増えるのですから、最初から年金の計算に入っていそうなものですが、前回の年金課長の発言から、政府はまったくそんなレベルではないことがわかると思います。

したがって、私たちは政府に頼ることなく、個人で個人の人生を考えるしかないのです。その時、すでにこのシリーズで述べましたので繰り返しませんが、

1)50歳になったら、全力で60歳から90歳までの貯蓄(お金、健康、恩)を始めること。

2)正しい知識で自分の健康を保つこと。

3)「自分は90歳まで動ける必要がある」と繰り返し口に出し、頭で理解しておくこと。

4)60歳から90歳までの30年間、生活費の3分の1は何らかの形で手に入るようにしておくこと。

5)人との関係を大切にし、感謝の心をもって人に接し、お世話をすること。

でしょう。

この中で、なんといってももっとも大切で、かつ難しいのは、90歳まで働けるか?ということでしょう。これは勤めている男性だけに関係があるのではなく、単身の女性、バツイチの女性、夫が勤めている主婦などにも共通して、今までと違った考え方が大切です。

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