※2013年8月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。
【商品名】機動戦士ガンダム Blu-ray メモリアルボックス
【惹句】アムロやガンダムとの距離が縮まる!! アナログによる繊細な色使いがHD化で鮮明に!
●歴史を書き換えた偉大な作品が高品質と貴重な資料満載で!
テレビアニメ50年の歴史の中でも、1979年に放送された『機動戦士ガンダム』ほど状況を大きく変えた作品は類をみない。作品詳細は省略するが、物語もデザインもアニメ業界発のオリジナル作品で、中高生以上向けアニメ作品が、連綿とつくり続けられる構造を導き出した意義と功績は大きい。
レーザーディスクで全話が初リリースされたのは、放映20周年直前にあたる1998年だった。DVD-BOX化も2007年と比較的遅めである。そういう流れを考えると、今回のBlu-ray化は比較的早めと言える。
原版は16ミリフィルムではあるが、35ミリにブローアップしてスキャンした結果は粒状感とのバランス含め、非常に良好だ。仕事柄、何度となく観ている第1話なのに非常に新鮮に感じる部分が多々ある。特に注目したいのが、Blu-rayならではの高音質、そしてセルと背景の色再現度である。限られた時間、人手、色数などの制約の中、研ぎ澄まされた知恵と工夫が涙ぐましい。
クオリティという観点では現在放送中のアニメと比べるべくもないが、人の繊細な感情が編みこまれたドラマや、高みをめざす壮大な世界観など、高画質化によって当時のスタッフがかけた情熱が、身近に迫ってくる。
特典類も充実している。企画書、第1話の脚本、絵コンテ、アフレコ台本をほぼ実寸で復刻、当時の雑誌類のアーカイブに、初出多数をふくむ124Pの「史料解説集」(構成は筆者)、特典BDなどがB5サイズの大きいBOXに満載だ。全43話を一挙に収録、36,750円と1話あたり1,000円を切る低価格も嬉しいポイントではないだろうか。まさに必携、必見のアイテムなのである。
●失われた幼き日々の感情が夏の風景を鮮烈に輝かせる
今月の必見映画は、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2013年8月30日公開)。通称は『あの花』である。『とらドラ!』『とある科学の超電磁砲』の長井龍雪監督によるオリジナルテレビアニメ(2011年)の劇場映画化だ。かつて仲良しだったのに、少女めんまの事故死を契機に気持ちがバラバラになってしまった高校生の少年少女たち。
そこに亡くなったはずのめんまが、小学生のまま幽体で現れて……という設定だが、ホラーではなく青春群像劇である。テレビシリーズは美しくも心に染みる情景描写が特徴だったが、劇場の大スクリーンではどう映えるのか、今から楽しみだ。
【2013年7月24日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)