マクロンは第2の仏革命を起こせるか

 久しぶりにフランスが小気味のよい動きを見せてくれた。中道新党の「共和国前進」の大統領候補で39歳の若きマクロン氏が、二大政党の共和党(中道右派)、社会党(中道左派)候補を破ってフランス政治に新しい風を吹き込んだのだ。

 続くフランス国民議会(下院定数577)選挙の決選投票でもマクロン新党が単独過半数の308議席を獲得し、大勝となった。25歳年上のブリジット夫人との結婚生活も今後話題になりそうだ。逆にかつての二大政党は共和党113議席、社会党に至っては29議席と大幅に減らし、マクロン一強体制を樹立したのである。

 フランスは1789年7月14日、市民によるバスティーユ牢獄襲撃から革命の火がつき、市民革命の波はブルボン王朝を倒しルイ16世が処刑されて王政廃止となった。革命の思想は自由・平等・博愛の精神にあり、これが民主主義の土台となった。その後フランス革命は混乱した挙句にナポレオンの帝政を誕生させることになる。

 しかしルイ王朝を倒したフランスの市民革命はその後の民主主義革命の基礎となる"人権宣言"を生み、近代国家誕生のきっかけを作ったのだ。この民主主義革命がヨーロッパに波及。やがて世界の封建制度を崩していったともいえる。その意味でフランス革命とアメリカの独立宣言(1776年)は、近代国家を作り出す上で大きな役割を果たした歴史的事件だった。

 今回のマクロン新党の大勝利は、戦後長く続いた保守・革新の時代の政治を打破するものだ。そして世界の政治も、フランス同様に戦後の保守・革新の対立を長く続けてきた。日本でいえば自民党対社会党の対決だ。しかしその日本でも自民党が衰弱し公明党の力を借りなければ政権が維持できない状況だし、社会党(現、社民党)はいまや崩壊寸前の運命にある。日本も世界も、実は戦後の保・革時代が終焉しつつあるのが実情で、21世紀の新しい政治思想が求められているといえる。

 マクロン新党は、まだ新しい思想を生み出したとはいえないが、旧い戦後の政治秩序形成に風穴を開けたことは間違いないだろう。フランス革命が世界に近代国家を生むきっかけを作ったように、今回のフランスの選挙結果は各国にも衝撃を与えるのではなかろうか。

 トランプ政権は旧い政治のあがきなのか、それとも新しいアメリカ政治へ向かう一里塚の現象なのか。果たして日本ではどうなるのか。都議選では"小池旋風"が吹いて自民党が大惨敗した。それにしては、小池新党にも敗けた自民党にも新しい"何か"が生まれている気配はみえない。新しい兆候が日本にも来たとみてよいのだろうか。

【財界 2017年8月1日号 452回】



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