女王様のご生還 VOL.218 中村うさぎ

突然、自分の性癖の話になって申し訳ないのだが、私はBLのエロ漫画が大好きである。

で、この自分の性癖に関して、長年、不思議に思っていた。

ひとつは「何故、男女のエロ本じゃなくてBLなのか?」という疑問。

もうひとつは、普通のアニメや映画でエッチなシーンになるとイライラして「それはいいから、はよ戦え!」と早送りしてしまうほどエロ要素が大嫌いなのに、BLのエロ漫画を読む時はストーリー部分を飛ばしてエロシーンだけ読む、というこの極端な向き合い方(笑)である。

まぁ、AV観てる人がストーリー部分を早送りして飛ばすのはよくある話だから、エロ漫画のストーリー部分をスワイプして飛ばし読みしてもおかしくないとは思うが、その一方で普通の映画やアニメのエロをこんなに嫌ってる人は少ないんじゃないかと思う。



「表現規制反対」などと言っているので「中村はさぞかしエロ好きなんだろう」と思われているかもしれないが、個人的にはアダルト物以外の映画やアニメのエロシーンが嫌いな人間なのである。

ただ、自分が嫌いだからといって規制するのは傲慢だと思うので、表現規制にはあくまで反対だ。

私の好き嫌いと規制の是非はまったくの別問題だと考えている。



そんなわけで、「エロ漫画は読むくせに、何故、普通の映画やアニメのエロシーンが嫌いなのか」という問題なのだが、どうやら私には「エロ脳」が別にあって、通常モードの時にいきなりエロを出されても咄嗟に切り替えられないためではないかと思われる。

つまり、ストーリーの行方や戦闘の勝敗に脳が集中している時に、息抜きなのかサービスなのか知らんけどエロを持ち出されても、ただただ邪魔でしかないのだ。

一方、エロ漫画を読む時は、最初からエロ脳が働いてるから、もうエロシーンにしか興味がない。

ストーリーとか登場人物の心の機微などどうでもいいのである。



つまり、だ。

私の中では日常とエロが断絶している、と言えよう。

そう考えると、BL好きにも納得がいく。

BLは男同士の恋愛やセックスを描くので、私の日常とはかけ離れている。

なまじ女性が出て来ると、エロと日常が繋がってしまって、どうにも興奮できないのだ。

特に私が好むエロBLは主人公がレイプされたりするシーンが多いのだが、これが女だとレイプというものが生々しく感じられてしまう。

犯される側の恐怖や苦痛をついつい考えてしまうので、気持ちがエロからどんどん遠ざかってしまうのだ。

レイプ物のエロ漫画でよくあるのは「犯されているうちに気持ちよくなって、ああん////」みたいなシチュエーションだが、これってめちゃくちゃ非現実的なファンタジーである。

男女のエロ漫画でこれをやられると「そんな都合いい話があるかー! レイプされるのって怖いし痛いし屈辱的で、気持ちいいはずねーだろ!」とムカムカしてくるのだが、BLならば自分を代入しなくて済むのでレイプ物も心おきなく愉しめる。

本当は「無理やり犯されて感じちゃった、ああん////」が大好きだしめちゃくちゃ興奮するんだけど、日常と地続きの設定でそれをやられると、エロ脳より通常モード脳が優勢になって拒絶反応を起こしてしまうのよ。

だから、とびきり非現実的なBLエロが好きなわけ。



自分の日常とエロが断絶してない人は、普通の映画などを観ていてエロシーンが出て来ると、嫌がるどころか嬉しいらしい。

とあるドラマを観たゲイの友人が「あのエロシーン、よかったわねぇ。興奮したわ~」と嬉しそうに感想を述べた時、私はそのシーンが必要ないと思ってたので心の中でびっくりした。

そうか、あれを喜ぶ人いるんだ!

てゆうか、喜ぶ人の方が多いからこそ、あそこでわざわざセックスシーンが挿入されたんだろうな。

ってぇことは、私って、この点に関してはマイノリティなの?

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