BDアニメ New Frontier 第10回『劇場版 機動戦士ガンダム00 ―A wakening of the Trailblazer―』

※2011年3月発売号の原稿です。

【惹句】圧巻の物量戦。目が追いつかないほどの高速バトルが結実する、驚愕のラスト!

 30周年を越えて量的にも充実したガンダムシリーズの中でも、『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』は、ひときわ印象的な作品になった。TV版(2007年)は「西暦を採用し、24世紀初頭の国家紛争を描く」「戦争根絶のためガンダムが武力介入する」という設定を採用。各陣営・組織に分かれたガンダムマイスター(パイロット)や軍人、為政者たちを全50話という長大な時間を駆使して重層的に描き、「戦争根絶」や「人の革新」という複雑な問題に挑戦する気概が随所に見られた。

 その続編として制作された劇場版(2010年)は、さらに先の地平をめざした意欲作だ。今度は「ガンダムと宇宙生命体が戦う」という禁じ手の物語でファンを驚かせた。地球外変異性金属体ELS(エルス)という不定形の存在が地球へ侵攻を開始。被害者が金属化するというホラー映画的な惨事が描かれる。やがて敵の本隊が太陽系に襲来し、怪獣映画か災害映画的に規模が拡大、人類は総力をあげて防戦する。

 このプロセスの中でガンダムマイスターとかつて敵側だったライバルたちは手を結び、迎撃にあたる。そんなオールスター戦的な要素も盛り込まれている。劇場版用に描かれたバトルシーンは超高速かつ高密度。CG主体のELSと手描き中心のモビルスーツが宇宙で交戦するシーンは目が追いつかないほどの勢いにあふれている。まさにBlu-rayの高精細な再生向きの映像だ。

 この壮絶な物量戦を通じて水島精二監督らスタッフの描きたかったものとは、「来るべき対話」というキーワードで語られる「人の理想」である。ガンダムシリーズでは「人はなぜ分かりあえないのか」というテーマが重要だ。本作はその最新のアンサーを出した。設定や物語は異端に見えても、真っ正面からガンダムの主題を継承して「夢」を追い求め、語り継ぎ、さらにその先をめざした作品なのだ。

 ラスト間近、主人公の運命とともに提示されるビジュアルには「あっ!」と驚きの声があがるはずだ。そして人類がたどる未来とは? 公開時、ラストの評価は大きく分かれた。筆者としてはTVで一部未消化に感じられたものが、別の方法論で示されたように思えたのだが……。

 おそらく意見が割れることを見越して「来るべき対話」という文言が設定されたのだろう。圧巻のモビルスーツ戦と個性が際だったキャラの台詞と行動で娯楽として存分に楽しんだ上で、マジメな対話も検討してみたくなる。そんな多角的なサービス精神にあふれた快作なのである。

【2011年3月1日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)